今回は2021年4月21日にリリースされたメジャーファーストシングル「はしりがき」EPに収録された「裸の旅人」の歌詞考察をしていきます。
Coleman WEB CM「灯そう」のテーマソングとなった「裸の旅人」は、作詞・作曲をヴォーカル・ギターのはっとりさんが手掛けました。
では早速歌詞の考察を始めていきましょう!

裸の旅人 歌詞考察
笑って笑って

歌詞の中の登場人物は主人公とその仲間複数の「わたしたち/僕ら」と「キャプテン」です。
MVにあるように、「キャプテン」率いる「わたしたち」探検家たちは森の中を探検しているようです。
主人公、もしくはその仲間たちの誰かが「キャプテン」に向かって呼びかける形をとった面白い構成の歌詞です。
隊員がキャプテンに向かって、天気が悪くなってきたので休むよう提案しても、キャプテンは却下してまいます。
更に、「あの歌のメロディが薄らいでいます」と、隊のテーマソングか何かを歌って欲しいとキャプテンにお願いしています。
団体行動、しかもその団体を取りまとめる誰かがいる状態だと、その上に立つ人の顔色を伺ったり、何をするにもその人の許可が必要になってきます。
私たちリスナーも、学校・職場など、どこかに所属しているかと思います。
先生や上司といった、上に立つ人たちに忠実に従って生きている私たちの日常をそのまま表しているような歌詞ですね。

ここのサビ部分では、そんな私たちの日常の中でふと思うような感情が表されています。
「働いて」「終わって飲もうぜ」の歌詞の前後に「笑って」「さあ笑って」というフレーズが配置されています。
MVでは「笑って」の歌詞で写真撮影の場面となっています。
写真を撮る際に「笑って」と声を掛けられることがありますが、遊び心が感じられるシーンです。
しかし同時に、日常の辛さを笑うことで胡麻化しているようにも、自らを鼓舞しているようにも感じられます。
「疲れちまうよ」「金なし、情無し」というフレーズがありますが、ここで日常の愚痴が提示されています。
しかし、「でも苦ではなし」と続きますので、その現状に多少の不満はあるもののダメージを被っている訳ではないようです。
更に、それぞれの生活を明るくしていこう、とポジティブな提案をしています。
自分の日常生活に多少の苦労や不満はあるものの、それぞれ折り合いをつけて頑張っていこう、といったところでしょうか。
迷路みたいだけど大丈夫

ここで「火」と「非」を並べた、はっとりさんお馴染みの言葉遊びが見られます。
冒頭と同様に「キャプテン」に向かって呼びかけていますが、「行き先をじつは知らない?」ととても重要な質問をしています。更に「一体、どこへ向かうの?」とたたみ掛けています。
探検の途中に道に迷ってしまったということでしょうし、同時にその探検の目的地自体を認識しないまま闇雲に進んでしまっている、という状況にツッコミを入れていると言えるでしょう。
探検を日常に置き換えて考えると、学校や職場で先生や上司から勉強や業務をするように言われるものの、その目的自体を認識せずに、ただ上から下へ命令を出しているのではないのか?という批判と言えるでしょう。

2番サビ部分も1番同様に「迷ってないで」「曲がって、出会って、話して」の前に「さあ笑って」というフレーズがあります。
現状は「迷路のようだ」し、「暇なし、果てなし」と困った状況にいる訳ですが、「でも独りじゃなし」とポジティブなフレーズがあります。
困った状況だけれど、これが独りだと大変だけれど他にも同じ境遇の仲間がいるし、と楽観的です。
そして、「灯そうぜライフ」と続きます。
拡大解釈して、ライフ=人生におきかえてみます。人生の目的もよくわからないし、迷路に入ったように迷いだらけだけれど、他のみんなも同じだから大丈夫だ、とここでも何となく周りと同調し妥協している姿が見られます。
抗って変わって

ここでは非常にポジティブなフレーズが並んでいます。
人を愛するということに、「審査」や「ノルマ」もありません。
「孤独」にスポットライトが当たることを願っていますが、これはイコール「灯そうよライフ」と言っても良いでしょう。
そして、「明日」もしくは「明後日か来週」に「会いに行く」とあります。
これはそれぞれ孤独を抱えた仲間たちに会いに行くと言っているのでしょうか。
次に、「僕ら」を表すフレーズが続きます。
ここの「星」は「人間」を表しているのでしょう。それぞれ違う姿をし、性格もまちまちですが、同じ人間には違いないのです。
上の立場の人から命令され受動的に行動し(垂直の関係性)辛い日々を送っている「僕ら」ですが、それでも何とか「笑って」頑張っている「孤独」なひとりの人間の「僕ら」という存在。
そんな「僕ら」の間には見えない横の繋がり(平行の関係性)があるように思えます。また同時に、人間は誰しも本来は平等であるべきだ、という思いが感じられる部分です。

ここでも更にポジティブな変化が見られます。
歌詞に「抗って」とあり、反抗心が見られます。更に「変わって」「戻って」「旅の途中」とあります。
人生には変化はつきものですし、人生を旅になぞらえ、来た道を「戻って」やり直すことも可能だ、と考えれば気も楽になるというものです。
ここでもまた「灯そうぜライフ」というフレーズがリピートされていますが、自らの人生にスポットライトを当てる、という能動的な行為です。
上から言われて受動的に何かをするのではなく、自分から自発的にやっていこう、と鼓舞しているようです。

そして、「迷って、出会って、繋がって」のフレーズは、人生での人との出会いを表しているようですね。
その後に、また「キャプテン」に呼びかけています。
探検隊のテーマソングと思しき「歌のメロディ」が薄らぎ、消えるのか?と質問しています。
それに対する答えが「思い出すために」薄らぎ、消失してしまう、というものです。
この歌、というのは隊をひとつに纏めるための上からのスローガンであったり、命令と解釈できるのではないでしょうか。
自発的に能動的に自らの人生を生きるのに、そのような「歌」は不要であるということです。
その馴染み深い「メロディ」も、自分の人生を生きるようになれば「思い出」に変わる、ということでしょう。
また、この答えですが、歌詞冒頭の「キャプテン」からのものであれば、もう隊の中に上下関係は消失したと解釈できます。
もし同一人物でなければ、「キャプテン」は交代したと考えられますね。

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さいごに
本楽曲「裸の旅人」のタイトルにはどのような意味があるのでしょうか?
タイトルを一瞥して、アンデルセンの童話「裸の王様」と似ている印象を持ちました。
この童話を踏まえるならば、「裸の旅人」はイコール隊のキャプテンと解釈可能でしょう。
Wikipediaによると、”身の回りに批判者や反対者がいないため、本当の自分がわかっていない権力者の比喩”と定義されています。
時に周りが見えなくなりがちな偉い立場の人々への痛烈な批判がタイトルに込められているように感じますね。
一見コミカルではありますが、辛辣な世界観の「裸の旅人」。
本楽曲を手掛けたマカロニえんぴつの今後の曲にも注目したいですね!