今回はSEKAI NO OWARIの新曲「Habit」の歌詞を考察していきたいと思います。
2022年4月29日に公開される映画『ホリック xxxHOLiC』の主題歌として書き下ろされた本楽曲。
蜷川実花監督からは「今を生きる若者たちへの優しさを込めてほしい」とリクエストされたそうですが、どんな歌詞になっているのか楽しみですね。
映画の内容と楽曲のコメントも合わせてみていきましょう。
映画『ホリック xxxHOLiC』
CLAMP(クランプ)の人気コミックを原作として、蜷川実花監督が実写化した映画作品。
神木隆之介さんや、柴咲コウさんをはじめ、豪華な出演者にも注目です。
大ヒットコミックが蜷川監督の手でどんな作品になっているのか、映画の公開が楽しみですね。
SEKAI NO OWARI 楽曲コメント
SEKAI NO OWARIのコメントをご紹介します。
今まで写真作品という形では何度もご一緒した事のある蜷川監督と、今度は映画を通じて新たなコラボレーションが出来ることをとても嬉しく思います。
SEKAI NO OWARIの普段はあまり見せない一面を表現した楽曲「Habit」を、映画の妖艶な世界観とともにお楽しみください。
Habit 歌詞考察

タイトル「Habit(癖・習性)」の通り、この楽曲では私たち人間の癖・習性について歌われています。
人間の習性とは何か、それは「何でもかんでも 分類、区別、ジャンル分けしたがる」ということ。
「世の中2種類の人間がいる」
「持ってるヤツ」と「モテないやつ」
「やるヤツ」と「ヤッてないヤツ」
この歌詞は、善と悪、光と闇など、二元論的に考えてしまう人間の習性を歌ったものですね。
歌詞の内容から、Fukaseさんが、すぐ分類したがる人間の習性に否定的であることが分かります。

陰キャと陽キャも相反する立場です。
冒頭の歌詞では、分類したがる習性について歌われていましたが、この部分では、分類するだけでなく、どちらかに所属したがる習性についても歌われているのではないでしょうか?
自分は陰キャであの人は陽キャだから、と分類されたカテゴリに自分を置いて、安心しているように思います。
動物である人間の群れる習性とでも言いましょうか、何かしらのグループに身をおいて、孤独にならないよう必死にカテゴリ分けしている様子が浮かびました。
そうして自分にレッテルを張り、属するカテゴリを決めた人々は、「本能の外側(自分の属するカテゴリの外)」を覗こうとはしません。
逆も然りですが、陽キャが陰キャのグループにわざわざ入ってきたりはしないですよね。

つまり人間というものは「そんな シンプルじゃない もっと 曖昧で 繊細で 不明瞭なナニカ」であると歌っています。
「持ってるのに出せないヤツ」もいるし、「やってるのにイケないヤツ」もいます。
陽キャに属する人間でも実は陰キャな一面を持っていたり、普段は陰キャな人も好きなことに関しては陽キャばりに明るく話すこともありますよね。
つまり、相反する2つの事柄に分類するような二元論的な考え方はできないとメッセージを投げかけています。
分類したがる習性を持った人間に対して、分類なんて出来ないし、するべきじゃないのだと説くFukaseさんの想いが伝わってきます。

ギフテッドとは、特別な才能を持って生まれてきた人のこと。
欧米諸国にはギフテッド専用の学校も数多くあり、その存在は広く世界に認知されています。
かつては飲み込みが早い、頭のいい、天才という言葉で呼ばれた人々も、ギフテッドという言葉で分類されていますね。
アンタはギフテッド、アタシは普通の主婦「それは良いでしょう? 素晴らしいでしょう?」の部分では、ギフテッドと普通の主婦に分類することで、できない自分を正当化しようとしている様子が描かれます。
私は普通の主婦だからできない、才能がないからできない、と自ら分類してできない理由を作っていますね。
続いて「不可能の証明」の部分について紹介していきます。
少し難解な表現になりますが、ある事柄が不可能であることを証明するのは可能であることを証明することよりも難しいです。
例えば、”人類が月に行ける”ということは証明されているし、現在の技術を持ってすれば、何度でも証明することができますが、”人類が火星に到達する”ことが不可能であるという証明はできません。
今後の技術の発展によって到達できるかもしれないからです。(現に有人火星探査も計画されてますし)
つまり「不可能の証明の完成なんじゃない?」という一節は、難しい”不可能の証明”は、分類することで完成するんじゃない?(自分を才能のない人間と分類することで「才能がないからできない」という説明が成り立つ)という意味です。
分類することで不可能の証明は完成するけど、人間はそんな簡単に分類できるものではない。
あなたの勝手な思い込みによる分類は、できないことの理由にはならない、自分にはできないと決めつけるのではなく、精一杯挑戦してみようよと呼びかけているように感じました。

Fukaseさんはこの曲の中で、夢を持って夢に向かって突き進もうなんて歌ってはいません。
相手のことを知りもせずにただ夢を持てなんて言える無責任な人ではないからです。
「ただその習性に喰われないで」
その習性とは、先程から述べられている”分類したがる習性”、”その分類によって自分にはできないと決めつける習性”のことを指していますね。
そんな習性から抜け出し、捨て去ることができれば、型にとらわれない新しい自分の姿が見えてくるのではないでしょうか?
Fukaseさんの想いが特に強く込められている部分だと感じました。

「俺たちだって動物 こーゆーのって好物」ここまで言われたらどう?とFukaseさんが投げかけています。
歌詞が抽象的ですが、動物という分類だからこーゆーのが好きだよねと決めつけられたら腹が立つよねと歌っていると感じました。
例えて言うならば、「女性なんだから結婚したら名字を変えるべきだよね」とか「男性だから育休なんて取るわけないよね」のようなことでしょうか。
他の人から分類されて決めつけられると腹が立つのに、できないことから逃げるときは自分自身を分類して言い訳をしてしまうのが人間という不合理な生き物です。
その不合理な習性を否定するわけではありません。
「俺たちだって動物 故に持ち得るOriginalな習性」動物である以上、習性を持っているのは必然。
でも、その分類したがる習性を諦める言い訳に使うのは良くないんじゃないか?
そんな悪い習性「Bad Habit」は壊してしまえと呼びかけています。

後半の歌詞では、若者へ向けて書かれたこの楽曲について、Fukaseさんの想いが歌われています。
(説教をしている立場である)大人の俺が言っちゃいけないけど「説教するってぶっちゃけ快楽」
この一言には共感できる大人も多いのではないでしょうか?
快楽を得るための説教だとしても、それが君の進むキッカケになればWin-Winじゃん、と開き直りのような歌詞が歌われていますね。
自分の快楽である説教を聞いて、どのように受け止めて、どうやって活かすかは君次第だし、説教の後君がどうなるかなんて俺は興味ないんだ、と突き放しているように聴こえます。
ですが、これまでの”自分で自分を分類して可能性を潰すのはやめろ”という強いメッセージを見ていると、説教臭い自分を振り返って照れ隠しをしているような印象を受けますね。
Fukaseさんのツンデレが表現されているのかもしれません。

再び説教に戻ります。
「この先君はどうしたい?」って他人に聞かれる時点で終わってる、終わって無くてもかなりの非常事態。
つまり、自分の生き方、自分のこれからなんて、人から聴かれる前に自分で決めなよというメッセージですね。
若者に向けた歌であること、MVでFukaseさんが先生役をしていることを考えると、この部分は学校の進路指導をイメージしているように感じました。
自分の進む路は他人から指導されるものじゃない、自分で決めて進んでいくものだという想いが表現されているのではないでしょうか?
多くの若者が「分類された普通の箱で燻ってる」世の中では、型から外れたFukaseさんは「人生イージーモード」
箱で燻った先に待ち受けているのは、あっという間に30代になる未来なのでしょう。
自分で決められない若者を皮肉っている様子が浮かびます。

この部分はFukaseさんが自分自身について歌っていますね。
「俺はそもそもスペックが低い」とは、ADHDを患っており、隔離病棟に入院していた過去を持つ自分のことを指しているのでしょう。
あの時の自分を分類すれば間違いなく”持たざるもの”
しかし、そこで自分は”持たざるもの”だからと諦めるのではなく、足掻いて足宛(もが)いて醜くても吠え続けました。
諦めず吠え続けた結果、SEKAI NO OWARIとして大成功を収めたFukaseさん。
この成功は腐らず、諦めず足掻き続けたからこそ、手に入ったものですが、あのとき自分を”持たざるもの”として分類した世間はすぐに、「金だとか、愛だとか、運だとか、縁だとか」いう2文字で片付けてしまいます。
自分たちのこれまでの頑張りをたったの2文字で片付けられては、たまったもんじゃありません。
2文字で片付くほど簡単なものではないんだという強いメッセージが込められているように感じます。

自分を含めた全ての人間は曖昧で複雑で不明瞭なナニカ。
持ってるもの・持たざるもの、陰キャ・陽キャ、などという二元論では到底分類できるものではありません。
若者にありがちですが、全てを悟ったふりをして驕っている人もいますよね。
前半の歌詞で歌われていた「持ってるのに悟ったふりして スカしてるうちに不安になっちゃったりするヤツ」でしょうか。
自分を分類する能力なんてないのだから、自分の限界を分類で決めてしまう悪しきHabit(習慣)はぶっ壊して、突き進んでいこうというメッセージが込められていると思います。
蜷川監督からのオファー通り、”今を生きる若者たちへ”Fukaseさんが送る”優しさ”が詰まった素敵な楽曲でした!
さいごに
いかがでしたか?
Fukaseさんだからこそ書ける素敵な楽曲でした。
リリースが楽しみです!
人の心の闇に寄り憑く”アヤカシ”が視える孤独な高校生・四月一日。
その能力を捨て普通の生活を送りたいと願う四月一日は、ある日、一羽の蝶に導かれ、不思議な【ミセ】にたどり着く。
彼の願いを叶える対価として、”いちばん大切なもの”を差し出すように囁く女主人・侑子。
同級生の百目鬼やひまわりと出会い、”大切なもの”を探す四月一日に、”アヤカシ”の魔の手が迫るーー!
映画『ホリック xxxHOLiC』公式サイトより引用