藤井風さん「ガーデン」の歌詞の意味を考察します。
2ndアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」(2022年3月)の収録曲。
藤井風さんが作詞・作曲、Yaffle(ヤッフル、小島裕規)さんが編曲・プロデュースした「ガーデン」の歌詞の意味を紐解きましょう。

ガーデン 歌詞考察
燃え尽きた果てのガーデン
鳥は春を告げて
出典:ガーデン / 作詞・作曲:藤井風
私は恋をして
素敵な温度だけ
触れさせて この肌で
ミニマルなフレーズが転調混じりで淡々と繰り返された挙句、ゴスペル(教会音楽)っぽく伸びやかなボーカルに壮大なコーラスが重ねられる展開が印象的なチルチューン「ガーデン」は、1stアルバム「HELP EVER HURT NEVER」(2020年5月)リリース直後に制作されました。
全11曲の2ndアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」は5曲目が「燃えよ」で6曲目が「ガーデン」という並びですが、実際に藤井風さんは1stアルバムリリース直後に燃え尽きた感覚になったそうで、「ガーデン」は「燃え尽きたところからの立ち上がり」という位置付けになっています。
また、言葉の響きとして、語尾がすべて「え段」でそろえられているという「母音のこだわり」も特徴的です。
サビの歌詞としても登場する曲名「ガーデン」の語尾は「ン」という撥音(はつおん、はねるおと)ですが、その直前の「デ」の発声のほうが強い点を踏まえると「え段」でそろえられている謎が解けるのではないでしょうか。
歌詞の内容としては、四季折々の「庭」の様子が美しく詩的に綴られていて、精神的なニュアンスも重なるようです。
1番のAメロで描かれているのは「春」。
「庭」の木々に「鳥」がやってくる風景が目に浮かびます。
「恋の季節」といえば夏が定番かもしれませんが、年度始めに「恋」が始まることも多いでしょう。
日本では気温的にも過ごしやすい時期なので、「鳥」や「春という季節」にも「恋」をするような心地いい「温度感」に誘われます。
雲は夏を帯びて
出典:ガーデン / 作詞・作曲:藤井風
私は目を閉じて
綺麗な時間だけ
追いかけて 尽きるまで
1番のBメロでは「夏」が描かれています。
「春」を感じるきっかけは「鳥」でしたが、「夏」の場合は「雲」というのも共感ポイントではないでしょうか。
脳裏に浮かんだのは「青空と真っ白な入道雲」のコントラストのはず。
「素敵な温度」に続いて、「綺麗な時間」という美しさのみに目を向けようとする姿勢に癒しが感じられます。
ラップではなく歌っていますが、韻を踏むかのように語尾の母音をそろえる手法はヒップホップ的。
また、「この肌で」と「尽きるまで」の部分のみ微妙に異なりますが、AメロとBメロの音程がほとんど同じところはミニマルミュージック的ともいえるでしょう。
さらに、「触れさせて」と「追いかけて」の音程は同じですが、前者のみ「触れさせぇて」と微妙にリズムが後ろにずれているところにJ・ディラ(J Dilla)の「ディラビート」的な揺らぎが感じられ、R&Bやネオソウルっぽさも漂います。
なおかつ、ひらがなで「9文字×3行+10文字」と文字数をそろえているところは俳句や和歌の変化形のようで、日本文学的な美意識にもこだわっているようです。
花は咲いては枯れ
出典:ガーデン / 作詞・作曲:藤井風
あなたに心奪われ
それでも守り続けたくて
私のガーデン 果てるまで
人は出会い別れ
失くしてはまた手に入れ
それでも守り続けたくて
私のガーデン 果てるまで
1番のサビです。
ここでも「同じフレーズの繰り返し」や「母音のこだわり」などが徹底されていて、音楽的なアプローチを「守り続けている」様子がひしひしと伝わってきます。
そのうえ「(花は咲いて)は枯れ」と「(人は出会い)別れ」と自然に韻を踏んでいるところが秀逸です。
「燃え尽きる」まで「恋」や仕事などに没頭したり、「出会いと別れ」が度重なったりすると、「花が枯れる」ように「心も枯れる」かもしれません。
それでも「心を守り続ける」ために「私のガーデン(=庭のような心)」の植物に水をあげ続けようとしています。
季節を巡る瞑想だった
夜が秋を呼んで
出典:ガーデン / 作詞・作曲:藤井風
私は旅に出て
素敵な出会いだけ
待っていて その日まで
2番のAメロの「季節」は「秋」。
「秋の夜長」という表現もあるので、「夏」より早く「夜」が訪れるようになって「秋」に気づくイメージでしょう。
また「秋」といえば「スポーツ、食欲、読書、芸術、紅葉」などが思い浮かびますが、そのなかに「旅」も含まれます。
1番のサビで「別れ」が強調されていたので、新たな「出会い」に思いを巡らせるのもしっくりくる流れです。
だから冬よおいで
出典:ガーデン / 作詞・作曲:藤井風
私を抱きしめて
その手の温もりで
生きさせて 溶けるまで
「秋」には「出会い」に「待っていて」と呼びかけていたので、2番のBメロで「冬」との「出会い」が待ち受けていました。
「冬の手の温もりで溶ける」という表現が何ともロマンチックです。
この後、1番のサビが繰り返されます。
季節に身を置いて
出典:ガーデン / 作詞・作曲:藤井風
流れに身を任せ
なるようになるだけ
受け入れて そのままで
流した涙だけ
ふりまいた愛だけ
豊かになる庭で
掴んだ手 解き放て 空の果て
四季折々が描かれた歌詞でしたが、心の「庭」で「季節」を巡らせる瞑想のような感覚を堪能できたのではないでしょうか。
これが「枯れた心の庭の植物に水をあげる」行為そのものだったことに気づかされます。
「燃え尽きた果ての立ち上がり」としては力まず、ありのままの自分を「受け入れる」ことがポイントなのかもしれません。
「手に入れたものを手放す」という執着のなさも循環につながりそうです。
ラストに1番のサビが繰り返されます(一部「ガーデン」前の「私の」なし)。
ゴスペルっぽい気高さや尊さに導かれることでしょう。

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さいごに
親しみやすいJ-POPですが、ヒップホップ、R&B、ネオソウルといったブラックミュージックのトレンドをそこはかとなく漂わせ、Yaffleさんの編曲・プロデュースもあり、藤井風さんらしいゴスペル調に集束していく展開が圧巻です。
コロナ禍などで疲れた心に響くのではないでしょうか。