Mrs. GREEN APPLE(ミセス、MGA)のミニアルバム「Introduction」(2014年7月)は、ライブ会場限定で販売された自主制作盤でした。
そのためMrs. GREEN APPLEは1stミニアルバム「Progressive」(2015年2月)でインディーズデビューを果たします。
初の全国流通盤「Progressive」のタイトルに込められているのは、音楽ジャンルのプログレ(プログレッシブロック)ではなく、「進化したい」という思い。
その6曲中1曲目を飾るのが、今回紹介する「我逢人」(読み方:がほうじん)です。
ベストアルバム「5」(2020年7月)にも収録されています。
ボーカル&ギターの大森元貴さんが作詞・作曲・編曲を担当した「我逢人」の歌詞の意味を考察していきましょう。

我逢人 歌詞考察
自分へのメッセージ

1番の冒頭は「かっこ」でくくられているので、歌詞の主人公ではない、別の誰かが話したり思ったりした言葉になっていると考えられます。
「嫌いな人の欠点ばかりが目につき、あら探しをしてしまう私から、ネガティブな嘆き悲しみを取り除いてほしい」という願いです。
その内容から、これはMrs. GREEN APPLEの楽曲を聴くリスナーの言葉ではないか、と推察できます。
ただし実際に助けを求められたわけではなく、おそらく大森元貴さんがリスナーの気持ちを想定して綴った歌詞です。
もしかしたら大森元貴さん自身にも思い当たる節があるのかもしれません。
少なくとも大森元貴さんにはこうした悩みを抱えている人の気持ちがわかるのでしょう。

この1番のサビで、冒頭の歌詞は「貴方」が発した言葉だったとわかります。
つまり「貴方」はリスナー、主人公は大森元貴さん自身やMrs. GREEN APPLEというバンドです。
「悩みを抱えているリスナーが、出会いに恵まれて悲しみから解放され、お互いに助け合うような優しい世の中になってほしい」と主人公は願っています。
リスナーが出会う相手はリアルな人間関係における誰かでもあり、Mrs. GREEN APPLEというバンドとその音楽でもあるでしょう。
そのまま受け取ると、リスナーを励ますためのメッセージソングや応援歌のようです。
ただし大森元貴さん自身は誰かのためというほど大げさなものではなく、自分が励まされるような歌詞として書いたと話しています。
「我逢人」の意味

タイトルの「我逢人」(訓読み:我れ人と逢うなり)は、日本の曹洞宗(仏教・禅宗の一派)の開祖・道元が、中国で曹洞宗の僧・天童如浄という「本物の師匠と出会えたときの感動」を表した言葉です。
それ以来「出会いの尊さ」を表す「禅の言葉」として一般的に広まりました。
ところが2番では、主人公自身が1番の冒頭で示したネガティブな悲しみにとらわれています。
たしかに「我逢人」はインディーズデビュー盤「Progressive」の1曲目なので、この曲を聴いてもらわなければ全国のリスナーとの出会いはありません。
Mrs. GREEN APPLEの曲を聴いて、誰もが幸せになる世の中を願っているものの、まだそうなるかどうかはわからないときだったので不安もあったのでしょう。

やはり1番冒頭の歌詞は、大森元貴さんがリスナーの気持ちを代弁しただけではなく、自分自身の悩みでもあったようです。
Mrs. GREEN APPLEの曲を聴いたリスナーが、苦しみながらもどうにか笑顔を絶やさない世の中になれば、大森元貴さんもMrs. GREEN APPLEも嬉しくなると考えられます。
ところが広い世の中にはリスナーが笑ってくれるだけでは解決しない問題もあると嘆き、「嫌い探し」を繰り返している状況です。
ここで「我逢人」が「禅の言葉」であることに着目し、歌詞全体が師匠と弟子のあいだで行われる「禅問答」(公案)になっていると解釈してみるのもおもしろいでしょう。
2番は「例えばリスナーの悲しみを癒してくれるはずのMrs. GREEN APPLEが悩んでいたら、リスナーはどうする?」という問題提起です。
ネガティブな沼にハマっている人を目の当りにしたら、誰もが救われる世の中を願わずにはいられなくなるのではないでしょうか。
「禅問答」は「答えの出ないやり取り」の比喩にも用いられるので、大切なのは「相手を思いやる」ことかもしれません。
笑顔でいよう

1番のサビが繰り返された後のラストです。
世の中には出会う人もいれば出会わない人もいるし、好きな人もいれば嫌いな人もいます。
それでも「尊い出会いに感謝しながら進化していきたい」ものですね。
ネガティブな感情を抱えながらも、ポジティブに笑い合いましょう。

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さいごに
Mrs. GREEN APPLEが活動休止中の2021年7月には、「Hug」(1stアルバム「TWELVE」収録曲)のリリックビデオと共に、「我逢人」のステージミックスビデオが公開されました。
それまでMVがなかった分、新宿MARZや新代田FEVERなど、さまざまなライブ会場での演奏シーンが身に染みるでしょう。