宇多田ヒカルさん「First Love」の歌詞の意味を考察します。

First Love 歌詞考察
初恋相手に教わった愛
最後のキスは
出典:First Love / 作詞・作曲:宇多田ヒカル
タバコの flavor がした
ニガくてせつない香り
松嶋菜々子さんと滝沢秀明さん主演のドラマ「魔女の条件」(1999年4月~6月)の主題歌「First Love」。
選抜高等学校野球大会(2000年春)の入場行進曲やNTT東日本の企業広告CMソング(2014年)にも起用されました。
インスパイア元になった、満島ひかりさん&佐藤健さんW主演のNetflixオリジナルドラマ「First Love 初恋」(2022年11月)の公開を記念して、「First Love (2022 Mix)」もリリースされています。
「魔女の条件」は、高校の女性教師・広瀬未知(松嶋菜々子さん)と男子生徒・黒澤光(滝沢秀明さん)の禁断の愛が描かれたシリアスなドラマでした。
その主題歌としてリリースされたのは宇多田ヒカルさんが16歳のときだったこともあり、「タバコの flavor(フレーバー、香り)」という表現や「First Love=初恋」の終わりが描かれた「せつない」R&Bに大人びた印象を受けた人も多かったのではないでしょうか。
明日の今頃には
出典:First Love / 作詞・作曲:宇多田ヒカル
あなたはどこにいるんだろう
誰を思ってるんだろう
今日「最後のキス」をして別れたので、「明日」の「あなた」の居場所も心のなかもわからないという内容です。
それでも語り手の「わたし」は別れた後の「あなた」のことを考えていて、未練が残っている様子が伝わってきます。
恋人がいない状態になれば「誰を思う」のも自由ですが、別れた翌日に早くも「別の人のことを考える」のか、それとも「元恋人を思い出す」のかは、どちらが別れを切り出したのかや別れ方にもよるでしょう。
子音の「R」または「L」が発音されず、「思ってるんだは~(ほ~)」と聴こえるところにも、「せつなさ」が感じられます。
You are always gonna be my love
出典:First Love / 作詞・作曲:宇多田ヒカル
いつか誰かとまた恋に落ちても
I’ll remember to love
You taught me how
You are always gonna be the one
今はまだ悲しい love song
新しい歌 うたえるまで
1番のサビです。
英語の部分は「あなたはこれからもずっとわたしの愛そのもの、特別な人。あなたが教えてくれた愛を忘れない」といったニュアンスでしょう。
「今後、誰と付き合うことになっても、愛する方法を教わった初恋相手は特別なので忘れられない」と解釈できます。
別れた直後なので「悲しいラブソングしか歌えない」わけですが、「新しい恋に出会うまで」ではなく「新しい歌 うたえるまで」になっているところが音楽家らしい歌詞といえるでしょう。
16歳にもかかわらず、自分の体験や感情をそのまま吐露するような作詞方法ではなく、「R&Bの様式美を踏まえたラブソング」としてしっかり創作しているところに才能を感じます。
特別な歌に昇華された
立ち止まる時間が
出典:First Love / 作詞・作曲:宇多田ヒカル
動き出そうとしてる
忘れたくないことばかり
「立ち止まる」主体は「わたし」などの人間のはずですが、「時間」と擬人化しているところがさりげなく詩的です。
「わたし」自身は「あなた」と付き合っていた「時間」のままで止まっていたかったのかもしれませんし、別れた直後に放心状態となり、「時間が止まった」ように感じた可能性もあります。
それでも現実的には「時間」は進む一方で、いつまでも別れたショックを引きずっているわけにもいきません。
そう理解していても、「忘れたくない、あなたとの思い出」に浸っているようです。
明日の今頃には
出典:First Love / 作詞・作曲:宇多田ヒカル
わたしはきっと泣いてる
あなたを思ってるんだろう
1番では「あなた」の「明日」を想像していましたが、2番では「わたし」の「明日」について言及しています。
もしかしたら「あなた」はもう「わたし」のことを考えていないかもしれないけれど、「わたし」はまだ「あなた」のことを忘れられないという対比です。
ドラマでは女性が年上の大人で、男性が10代の高校生という設定でしたが、歌物語では「わたし」が10代の女性で、「あなた」が20歳以上の大人の男性なのでしょう。
「わたし」にとって「あなた」は初恋相手だとしても、「あなた」にとって「わたし」は初恋相手ではない印象を受けます。
「初恋だから忘れられない。初恋ではないから早く忘れられる」とも限りませんが、やはり初めての別れのショックは大きいのではないでしょうか。
You will always be inside my heart
出典:First Love / 作詞・作曲:宇多田ヒカル
いつもあなただけの場所があるから
I hope that I have a place in your heart too
Now and forever you are still the one
今はまだ悲しい love song
新しい歌 うたえるまで
2番のサビです。
英語の部分は「あなたはいつも私の心のなかにいる。あなたの心のなかにも私の場所がありますように。これからもずっとあなたは特別な人」といった意味です。
「あなた」側の本心は描かれておらず、「特別な人」は常に現在の交際相手や結婚相手のほうが望ましい気もしますが、誰にとっても1回きりの「初恋のせつなさや特別感」が描かれていたのではないでしょうか。
ラストに1番のサビ(「今は」なし、「新しい歌 うたえるまで」なし→「Now and forever」)が繰り返されます。
どれほど「新しい歌」がリリースされても、「First Love」が「特別な歌」としてたくさんの人の「心のなかにある」ところが「わたし」の願いどおりといえるかもしれません。

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さいごに
もしかしたら「タバコの flavor」と「Now and forever」で韻を踏んでいるため、「思ってるんだろう」も「思ってるんだは~」と息を抜いたのかもしれません。
R&Bの様式美に則った作詞方法として、子音や母音の言葉の響きにもこだわるところは最初から確立されていたといえるでしょう。
さすが宇多田ヒカルさんと唸らされる至極のバラードでした。