ヒゲダンことOfficial髭男dism「ESCAPADE」(読み:エスカペイド)の歌詞の意味を考察します。
1stアルバム「エスカパレード」(2018年4月)の収録曲。
藤原聡さんが作詞・作曲、CHRYSANTHEMUM BRIDGE(クリサンセマム・ブリッジ)が編曲した「ESCAPADE」の歌詞の意味をチェックしましょう。

ESCAPADE 歌詞考察
ラブソングではない?
何度見つめても足りない
出典:ESCAPADE / 作詞・作曲:藤原聡
指でhold me tight
まるで夢みたい
曲名の「ESCAPADE」は「常軌を逸した突飛な行為、向こう見ずないたずら、大胆な冒険や逃避(Escape)、脱出、脱線行為」といった意味です。
ニュージャックスウィングの立役者ジャム&ルイスがプロデュースした、ジャネット・ジャクソンの大ヒット曲「Escapade(エスカペイド)」(1990年1月)も意識しているでしょう。
ただ、アース・ウィンド&ファイアー(EW&F)のボーカル、モーリス・ホワイトが亡くなった(2016年2月3日、大胆な冒険に出かけた、この世から脱出した)ときに作られた楽曲とのことで、モーリス・ホワイトとチャールズ・ステップニーがプロデュースしたEW&Fのファンクの名曲「Getaway(ゲッタウェイ)」(1976年)の影響のほうが大きいように感じられます。
また、アルバムタイトルの「エスカパレード(ESCAPARADE)」は「Escapade(冒険)+Parade(パレード、行進、整列)」の造語です。
「ヒゲダンのメンバー4人の冒険(楽曲)が列をなしている(13曲集まってアルバムになっている)」といった意味が込められています。
その冒険のひとつ「ESCAPADE」はラブソングを装いながら、実はモーリス・ホワイトを追悼している楽曲。
「hold me tight」は、おそらくEW&FのR&Bチューン「Hold Me」(2003年8月)へのオマージュでしょう。
そこに「tight=タイ(ト)」が加わり、「~たい」などと韻を踏みまくっています。
どこの誰にでも言いたい
出典:ESCAPADE / 作詞・作曲:藤原聡
想い伝えたい
募りゆくばかり
恋人に対する恋愛感情が綴られているようにも受け取れますが、実はモーリス・ホワイトやEW&Fへの音楽愛、とくにブラックミュージックに向けての感謝が込められています。
軽快なビートに乗っかって
出典:ESCAPADE / 作詞・作曲:藤原聡
余生の相場を狂わして
人生はまだイントロなんだって
僕に耳打ちした
「ビート」や「イントロ」といった音楽用語が散りばめられているところにも、音楽愛が感じられます。
この世界に溢れかえってる矛盾を全部解決するかのような
出典:ESCAPADE / 作詞・作曲:藤原聡
華奢な体がそこに宿ったスマイルが
ありふれ過ぎた日常に新しくくれた曲がり角
曲がって突き当たりの公園で偶然見つけた神様
手を取り合って踊りませんか?
Ah Ah
1番のサビです。
「華奢な~スマイル」や「神様」とは、まさにモーリス・ホワイトのことでしょう。
まるで「華奢で笑顔が素敵な女性に偶然公園で出会って、一緒に踊ろうと誘っている」ようにも解釈できますが、ファンキーなディスコミュージックの「神様」といえばEW&Fおよびモーリス・ホワイトに違いありません。
藤原聡さんとしては、ブラックミュージックを深めるきっかけとなったEW&Fおよびモーリス・ホワイトにどれほど感謝してもしきれないはず。
その音楽に敬意を表して、「追悼のダンスを踊ろう」と語りかけているようです。
月の裏側で居眠りしている理由とは?
どんな時でも守りたい
出典:ESCAPADE / 作詞・作曲:藤原聡
ただのby your side
いつでもウェンザナイ
どこの誰にも渡さない
頬にコピーライト
つけさして!いいじゃない!
「by your side」はコモンやウィル・スミスなどのサンプリングでも知られるEW&FのR&Bバラード「Side by Side」(1983年4月)、「ウェンザナイ」は同じく「Spend the Night」(1993年)へのオマージュでしょう。
「コピーライト」は「著作権、著作権表記」という意味なので、「著作権を守りつつ、サンプリングするかのように、EW&F絡みの言葉を引き合いに出している」と解釈できます。
まるで「恋人を守りたい、一緒にいたい。いつでも夜でも、誰にも渡さない。頬にキスマークをつけさせて」と恋愛を語っているかのように誤解させつつ、音楽愛を爆発させるテクニックは、ヒゲダン流の通常運転といえるでしょう。
右も左もわからないで
出典:ESCAPADE / 作詞・作曲:藤原聡
ストイックにかつ無我夢中に
なる君のこと羨ましいなんて
少し思ってしまった
同じ音楽家としては、生涯「ストイック」に音楽を生み出し続けた憧れの音楽家に対して「羨(うらや)ましい」という感情が芽生えるのも無理はないでしょう。
ここでも「君=恋人」のようにも受け取れるところがおもしろいですね。
この世界に敷き詰められた夢も全部叶え尽くすかのような
出典:ESCAPADE / 作詞・作曲:藤原聡
ふたつの光ホワイトよりも白い声で
断崖絶壁の夜空も吹き飛ばすほどの風が吹く
銀色の月のその裏側で居眠りしている神様
奇跡を頂きありがとサンキュー!
Ah Ah
2番のサビです。
とうとうモーリス・ホワイトの「ホワイト」まで出てきました。
「亡くなった」ことを「月の裏側で居眠りしている」と表現しているのは、EW&Fのコンセプトでもあり、サン・ラやジョージ・クリントン率いるPファンク周辺にも共通するアフリカ系の宇宙思想「アフロフューチャリズム」を踏まえてのことでしょう。
間奏の後、1番のサビが繰り返され、「さあ!」という呼びかけの言葉で締めくくられます。
大好きな音楽家が亡くなっても、そのファンキーな音楽性ゆえに湿っぽくならないどころか、「踊ろう」と呼びかけることで追悼の意をあらわすという徹底ぶりでした。
「月の裏側で居眠りしている」モーリス・ホワイトにも感謝の言葉が届き、誘いに応じてくれるかもしれませんね。

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さいごに
J-POPファンのあいだではなぜかラブソングが流行る傾向にあるので、その点も踏まえつつ、「裏側」では日本独自のありきたりのラブソングに疲れきっている音楽ファンが大喜びする冒険が展開されていました。
ヒゲダンをきっかけに、EW&Fやチャールズ・ステップニーなどのすばらしい音楽を聴く人が増えるといいですね。