ゆずの21stシングル「栄光の架橋」(2004年7月)の歌詞の意味を考察します。
NHK「アテネオリンピック中継」(2004年8月)のテーマソングのほか、アサヒ飲料「香る緑茶 いぶき」のCMソング(2009年)、「東京2020オリンピック」開催時(2021年7月~8月)に日本生命のCMソングにも起用された楽曲です。
北川悠仁さんが作詞・作曲、松任谷正隆さんが編曲を担当した「栄光の架橋」の歌詞を見ていきましょう。
栄光の架橋 歌詞考察!
みんなの人生応援歌
「栄光の架橋」がテーマソングとなったアテネオリンピックでは、体操男子団体で日本が28年ぶりに金メダルを獲得しました。
その決め手となったのが、冨田洋之選手(当時)の鉄棒の演技です。
フィニッシュの下り技(おりわざ)は「伸身の新月面宙返り」だったので、NHKの刈屋富士雄アナウンサー(当時)は「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架橋だ!」と実況。
この「栄光への架橋」は2004年の流行語大賞にノミネートされましたが、大賞を受賞したのは水泳の100m・200m平泳ぎで金メダルを獲得した北島康介選手(当時)の「チョー気持ちいい」でした。
ただ、金メダルという「栄光」を手にした金メダリストは夢が叶った状態です。
「栄光の架橋」で描かれているのは「夢の途中」なので、負けた選手の苦労や挫折が表現されていると考えられます。
人前では気丈に振る舞いながらも、ひとりになると不調やケガなどで悔し涙をこぼすこともあったのではないでしょうか。
実際の「架橋」は「橋を架けること」や「架けた橋」を表していますが、「つなぐ役割を果たすもの」や「仲立ち」といった意味でも使われる言葉です。
また、オリンピックで「栄光」といえば、やはり金メダルを獲ることでしょう。
しかし「栄光の架橋」と組み合わさると、ストレートに「金メダルを獲れ!」と応援しているというよりは、自分にとって誇らしいと思える方向につながる道を「進めばいい」と敗者に寄り添っているイメージです。
さらにオリンピック選手やアスリートに限らず、挫折を乗り越えながら前向きに生きる人のための人生応援歌にもなっています。
スポーツをしている人はもちろん、日常生活や職場、学校など、さまざまな場面で葛藤しながらどうにか生き抜いている人にとって励みになるメッセージです。
自分らしい虹を見つけよう!
アテネオリンピックの体操男子団体では実際に「伸身の新月面」が「栄光への架橋」になりましたが、楽曲では「栄光の架橋」は「虹」を象徴しているのではないでしょうか。
歌詞にさらけ出されているのは表向きの笑顔ではなく、誰にも見せないようにしてきたはずの裏側の泣き顔ばかり。
雨上がりの空に架かる「虹」は、もがき苦しみ、涙を流し続けた夜を越えてたどり着いた現在の晴れ間を表しているようです。
「虹」が七色に光り輝いているのは「たくさんの支え」があったからかもしれないと想像を膨らませることもできるでしょう。
誰しも苦労はするものですが、とくにオリンピック選手やアスリートは勝負の結果によって人生が大きく左右されます。
金メダルを獲得できる選手は極少数で、大半が敗者でしょう。
それでも必ずしも金メダルを獲るような「勝ち」だけが「光」とは限りません。
困難を乗り越えた果てに「自分らしい生き方」という「光」が待ち受けていることもあります。
それが雨上がりの空に架かる「虹」になぞらえた「希望に満ちた空」であり、「栄光の架橋」なのではないでしょうか。
あるいは金メダリストですら「夢が叶ったからゴールにたどり着いた」とは言い切れない場合もあるものです。
敗北も数多く経験しているでしょう。
あるいは勝負とは無縁の人生でも、それぞれの「闇を越えた果ての光」を感じることができる歌詞になっています。
気楽に生きているように見える人でも、実は裏で並外れた努力をしていることがあります。
何もかも順風満帆といった明るい顔をしている人が、実は夜な夜な泣き明かしている場合もあるでしょう。
身近な存在や大切な仲間だからこそ、なおさら弱みを見せられないと強がってしまうケースも多いもの。
そんなあなたに「ここでは泣いていいよ」と寄り添ってくれているような気分になる歌詞です。
人生が続く限り、「ようやく到達した現在」の繰り返しであり、ひとつの目標を達成しても決してゴールではないので、「自分の心につながる橋を架け続けよう」というメッセージでした。
「栄光の架橋」を聴いて思いっきり涙を流したら、これまでの苦労が報われたような晴れやかな「光」に包まれるはず。
「明日も前向きに暮らそう」など、自分らしい「虹」を再確認することができたのではないでしょうか。
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さいごに
「栄光の架橋」は6thアルバム「1 ~ONE~」(2004年9月)、ベストアルバム「Going [2001-2005]」(2005年6月)、「YUZU YOU [2006-2011]」(2012年4月)、「ゆずイロハ 1997-2017」(2017年4月)にも収録されています。