ONE OK ROCK(ワンオクロック)「どっぺるゲンガー」の歌詞の意味を考察します。
3rdアルバム「感情エフェクト」(2008年11月)の収録曲。
TAKAさんが作詞・作曲した「どっぺるゲンガー」の歌詞の意味を見ていきましょう。

どっぺるゲンガー 歌詞考察
ドッペルゲンガーとは?
何かに導かれるかのように 出て行く僕の影
出典:どっぺるゲンガー / 作詞・作曲:TAKA
つながれてた鎖も今じゃ何の意味も成されない
冷たくあしらったせいか…それともただ単純に
僕という人間に飽きたのか?
分かりはしないけど…
もし光がさしても 抜け殻の僕がただただいるだけ
曲名の「どっぺるゲンガー」は、迷信、神話、伝説、小説などの題材として扱われる、オカルト(神秘)的な超常現象「ドッペルゲンガー」(自己像幻視)のことでしょう。
精神医学や心理学の分野では「オートスコピー」と呼ばれ、研究も進められていますが、科学的には解明されていない謎です。
そのため「どっぺるゲンガー」は、「表の顔、建前、光」と「裏の顔、本音、影」などの極端な自己矛盾を「ドッペルゲンガー」になぞらえたフィクションであると考えられます。
冒頭のパートで描かれているのは、「鎖につながれていたはずの僕の分身のような影が、鎖を解き放って出て行った場面」です。
その様子を「抜け殻の僕」が呆然としながら見ています。
「本人と分身」が「光と影」ではなく「抜け殻と影」に分かれていて、「本人は光を失っている」状態になっているところが心配です。
I wanna be wanna be
出典:どっぺるゲンガー / 作詞・作曲:TAKA
逃げ出した黒い僕に どうやって?
I’m tryin’ I’m tryin’
未知数な領域をぐるぐる回んのさ
その僕が僕に帰る瞬間は
It’s just time!
Now I’m here, now I stand, when I’m playing on my stage
1番のサビです。
「本人と分身」を統合させようとしてもどうすればいいのかわからず、堂々巡りのような状況に陥っていると考えられます。
そもそも「ドッペルゲンガー」は科学的に解明されていない謎なので、その解決方法も「未知数な領域」といえるでしょう。
ではなぜTAKAさんがこのような超常現象を歌詞の題材として取り上げたのかというと、英語の部分に答えがありそうです。
つまり「分身が本人に帰る瞬間は、ステージで演奏しているとき」ということ。
要するに、プライベートでは悩みもあり、どれが本当の自分かわからなくなったり、「影」だけが動いて「本人」は「抜け殻」のような状態になったりすることもあるけれど、「ステージの上だけは本当の自分でいられる」という話でしょう。
やるべきことは音楽だけ!
情報や利益、自分の都合と一緒に付けられた
僕の住む体はもう変色して腐る一歩手前
徐々に蝕んで溶かすそいつらは
あたかも「始めから君の中にいました。」
みたいな顔でその場をやり過ごすんだろ?もしこのまま僕がここにい続ければ
出典:どっぺるゲンガー / 作詞・作曲:TAKA
僕も溶けてなくなるよ
1番の語り手は「本人」でしたが、2番冒頭の語り手は「分身=僕の影、黒い僕」になったようです。
そもそもフィクションとはいえ、なぜ「分身」が出現したのかというと、「情報、利益、自分の都合」を考慮しなければいけないという悩みがあるからでしょう。
ワンオクに限らず、バンドやアーティストは売れることによって活動の規模が大きくなり、「本人が好きなように音楽を作って、リスナーに届けるだけ」というシンプルな話ではなくなりがちです。
規模の大きな音楽活動を継続するためには「ポジティブな情報」を拡散する必要がありますが、その反面「ネガティブな情報」が飛び交う確率も高まるものです。
売れれば売れるほど関係者や経費が増え、「利益」を上げ続けなければいけないという問題を抱えることにもなるでしょう。
「本人の都合」だけを優先できる状態ではなくなり、「自分の都合」を言い出す大人だらけになるはず。
もちろん仕事とはそういうものですが、バンドマンやアーティストには「情報、利益、誰かの都合」とは無縁の聖域で音楽を生み出したいという根源的な欲求があるのではないでしょうか。
逆に、売れるため、有名になるため、人気者になるための手段として音楽を選ぶ人もいますが、そうした音楽愛のない人は「ドッペルゲンガー」的な悩みを経験しないでしょう。
音楽好きなリスナーも、「売れる音楽」が必ずしも「音楽的におもしろい音楽」ではない状況に心を痛めているはず。
そんな「売れる音楽」を量産しなければいけいという考え方に取りつかれた「分身」が存在し続けると、音楽愛にあふれた「本人」まで消えてしまうと危惧しているのではないでしょうか。
I wanna go wanna go
出典:どっぺるゲンガー / 作詞・作曲:TAKA
区切りすら無い場所へ You’re a stranger
I’m alone I’m alone
それでもブレずただ自分信じんのさ
ただそうやるべきことはひとつだけ
それ以外はない
What I hear and what I play, they’re everything in my heart
Can’t you see that?
悩みを吐露した後の2番のサビでは、語り手が「本人」に戻ったようです。
あるいは「本人」と「分身」の「区切りがない状態」になったのかもしれません。
いずれにしても、自分を他人のように感じたり、孤独にさいなまれたりしながらも、「本人」と「分身」の「区切りがない場所=ステージ」があるので「ブレずに自分を信じよう」としています。
たどり着いたのは「僕が聴くもの、演奏するものが心のすべてなので、やるべきことは音楽のみ」という境地です。
リスナーに「心の音楽が見えない?」と呼びかけているところもTAKAさんらしいのではないでしょうか。
たとえもう僕があの鎖に繋がれても
出典:どっぺるゲンガー / 作詞・作曲:TAKA
君の指示を受けるつもりはない!
「鎖につながれる」ように「本人」と「分身」に分かれても、もう「分身=君」の言いなりにはならないと宣言しています。
あるいは、今後も悩み続けるとしても、「本人」と「分身」は統合されたので、「自分の都合ばかりを主張する第三者=君」の「指示は受けない」という主張かもしれません。
ラストに2番のサビが繰り返されます。
ファンには「ワンオクの心の音楽が見えた」のではないでしょうか。

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さいごに
現実的には自分はひとりしか存在しないので、分身が見えることはあり得ないはずです。
また、音(音波)は形がない「空気の振動」なので、一般的には目に見えないでしょう。
それでも音楽は心のこもった創作物なので、さまざまな情景を思い浮かべることができるはず。
さらにライブでは演奏者が見えるので、視覚的にも「心の音楽」を感じることができるかもしれませんね。