今回は2010年7月28日にリリースされたデジタルシングル「ドーパミント!」の歌詞考察をしていきます。
グリコ「ウォータリングキスミント」のCMソングとなった「ドーパミント!」は、ヴォーカルの椎名林檎さんが作詞を、キーボードの伊澤一葉さんが作曲を手掛けました。
では早速歌詞の考察を始めていきましょう!

ドーパミント! 歌詞考察
衝動は抑えず抑えられずキケン

歌詞の登場人物は主人公と「君」の二人です。
先ず、冒頭に「BPM119」とありますが、この「BPM」とは曲のテンポのことで、”Beat Per Minute”の略です。つまり一分間に何拍あるか、ということです。
「心(しん)ノ臓(ぞう)」は心臓のことですが、心拍数がこの「BPM119」と同じテンポであってくれ、つまり、あまり早く脈打ってくれるな、と願っています。
ちなみに、本楽曲のBPMは歌詞に合わせ119になっているのは非常に粋で、事変ならではの拘りと言えるでしょう。
次に、「君」についての描写が「先天性加虐趣味(サディスティック)」とあり、漢字部分を見れば一目瞭然の性癖を持っているのがわかります。
そんな「君」に向けて「THE BEAT GOES ON」とあり、この「BEAT」は様々な意味があります。
心臓の鼓動や脈拍のほかに、音楽の拍子やロックなどの強いリズムという意味も持ち合わせており、本楽曲では心臓と音楽の「BEAT」の両方を指していると思われます。
つまり、心臓の鼓動も打ち続けていますが、音楽のビートも続いているのです。
そして「キケン」とあり、これから何かが始まろうとしている緊張感のようなものが漂っている感じがしますね。

ここでの冒頭「婀娜(あだ)」ですが、広辞苑によると、色っぽくなまめかしいさま。洗練されて粋なさま。とあります。
色っぽくありたいという年頃、であると同時に、洗練され粋でありたい、つまりはカッコよくありたいと思う年頃の主人公。
次に「生心(なまごころ)」とありますが、広辞苑によると、未熟な心。いろけ。といった意味があります。
前出の「婀娜(あだ)」という言葉も踏まえ、ここではいろけということでしょうね。
主人公の色っぽくありたいという気持ちを抑えることが出来ず、「厄介」ではあり「不可解(ふかかい)」であるけれども、「万歳(ばんざい)」とあるので、敢えてその気持ちを抑えることはせず、受け入れているようです。
そして「離陸態勢(TAKE A TRIP)」という意味深な歌詞が続いています。
「TRIP」には旅だけではなく、薬物によるトリップや刺激的な体験といった意味も持ち合わせているので、主人公は衝動を抑えることなく、「君」との性行為に及ぼうとしていることがほのめかされていると言えるでしょう。
また同時に中毒性のある音楽に身を任せたいという衝動をも描いているように思えます。

このサビ部分でタイトルの一部「ドーパミン」が出てきます。
「ドーパミン」とは、広辞苑でノルアドレナリンの前駆体、中枢神経系で神経伝達物質としても働く。等と定義されています。
またWikipediaによると運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる、とあります。
性的なものであれ音楽であれ、主人公は快感を覚えており、「とっても立って居られない」「抑えらんない」と、「抗えな」い状態にいます。
そして、「CAN’T STOP THE BEAT」とあり、心臓の鼓動も鳴り続け、音楽のビートも止めることは出来ないでいます。
更に「骨抜きにして」とその衝動に全面降伏している様が見て取れます。
1番サビラストではこの衝動以外の「世界」など、もうどうでも良い、といった気持ちになっているようですね。
衝動に抗わず抗えずヤバイ

この2番冒頭では、「BPM238」と数値が上がっており、音楽のテンポも心臓の鼓動も速くなっていることがわかります。
1番と異なり、主人公はその衝動を抑えようとはせずに、「全煩悩(ぜんぼんのう)」とビートの速さとを競わせようとしています。
もうこの段階では衝動に突き動かされるままになっている状態でしょうか。
次に「後天性被虐趣味(マゾヒスティック)」とあり、1番の「先天性加虐趣味(サディスティック)」と対比させています。
更に、「THE HEAT’S GOIN’ ON」とあり、1番の「BEAT」と「HEAT」が韻をふんでおり、「キケン」が「ヤバイ」に変わっており、巧みな言葉遊びが見られます。

「蹌踉(よろ)めき」は、足元がよろよろとする意味だけでなく誘惑にのる、うわきする、といった意味も広辞苑にあります。
次に「花心」とありますが、こちらもうわきごころ、という意味があります。
これらを踏まえると、主人公にとって「君」との関係は普通の恋人の関係ではなく、浮気相手ということのようです。
そして、「私語(ささめごと)」ですが、広辞苑によるとひそひそ話。多く男女間の睦言などとあります。
「O.A.されない私語(ささめごと)」とは、テレビなどの放送に乗せられないような男女間で交わされる官能的な言葉ということで、主人公はそういった言葉に完全にノックアウトされ、「衣類没収(START TO STRIP)」状態になります。
STRIPは裸になる、という意味で、衣服を脱ぎ始める訳です。「衣類没収」は上手い言葉遊びとなっています。
病付きでメロメロ

ここからは衝動に身を任せている主人公の艶めかしさが描かれています。
「焦れったい」「待って居られない」「生殺し」などのフレーズが羅列され、衝動を自身でコントロールできずにいる主人公がいます。
そして「DON’T STOP THE BEAT」とあり、心臓の鼓動も音楽のビートも止めないで欲しいと思っています。
そして「病付きにして」とあり、その衝動を完全に抑えることもコントロールしようとすることも手放し、身を任せている状態がわかります。

ラストサビですが、さらにヒートアップしているのが見て取れます。
「堪んない」「最高さ」「気持ち好いよ」とあり、快楽にどっぷりと浸っている様子がわかりますね。
「もう駄目崩壊寸止め爽快」「メロメロにして」からのラスト「世界が真(ま)っ白(しろ)け」といったフレーズから、主人公が快楽の頂点に到達したのがわかります。
非常に赤裸々な言葉とフレーズのオンパレードで官能的な世界が表されていますね。

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さいごに
本楽曲「ドーパミント!」は、快楽をも司る化学物質の「ドーパミン」とCMの商品の「ミント」を合わせた造語となっています。
JAZZテイスト全開のメロディやアレンジとも相まって、スリリングで官能的な雰囲気をキープしつつも、大人っぽくCOOL(=カッコいい)な印象をも醸し出され、性的な快楽だけでなく音楽という快楽をも同時に表現することに成功していると言えるでしょう。
快楽の衝動からその行為までが巧みな言葉遊びで表現された歌詞とCOOLなJAZZサウンドが上手く溶けて、聴く度に「病付き」になる快楽を与えてくれる「ドーパミント!」。
本楽曲を手掛けた東京事変の今後の曲にも是非注目したいですね!