米津玄師さん「でしょましょ」の歌詞の意味を考察します。
10thシングル「馬と鹿」(2019年9月)のカップリング曲。
米津玄師さんが作詞・作曲した「でしょましょ」の歌詞の意味を見ていきましょう。

でしょましょ 歌詞考察
異常な世界を生き抜く方法とは?
如何でしょ あたしのダンスダンスダンス
出典:でしょましょ / 作詞・作曲:米津玄師
ねえどうでしょ? それなりでしょ?
一人きり 見よう見まねで憶えたよ 凄いでしょ?
「でしょましょ」はシングルの表題曲「馬と鹿」と対になる楽曲です。
「馬と鹿」は池井戸潤さん原作、大泉洋さん主演のドラマ「ノーサイド・ゲーム」(2019年7月~9月)の主題歌で、社会人ラグビーチームの再建を目指す熱血サラリーマンドラマの内容を踏まえ、「何かに熱中することの美しさ」がポジティブに表現されています。
対する「でしょましょ」で描かれているのは、「一点に集中することの不気味さ」というネガティブな側面です。
同じ「一点集中」でも、ポジティブな見方をすると「熱狂」になり、ネガティブに捉えると「狂気」にもなり得ます。
米津玄師さんは個人的にもポップシンガーとしても、「中間を保つ」ことを大切にしているそうです。
両極端な意見があるときに、両方の話を聞きながらどちらにも偏らず、なるべく中立的な立場でいたいといったニュアンスでしょう。
その考え方を反映するかのように、「一点集中」というテーマに対して、ポジティブな「馬と鹿」とネガティブな「でしょましょ」になっています。
冒頭のパートで描かれているのは、「ダンス」に集中する「あたし」です。
曲名の「でしょましょ」のうち、相手の同意を促す「でしょ」のほうが多用されています。
まるでSNSに「踊ってみた動画」をアップして「いいね」を欲しがっているような承認欲求が感じられるのではないでしょうか。
異常な世界で凡に生きるのがとても難しい
出典:でしょましょ / 作詞・作曲:米津玄師
令月にして風和らぎ まあまあ踊りましょ
るるらったったったった
1番のサビです。
まず「令月(れいげつ)にして風和(かぜやわ)らぎ」は、2019年5月1日に「平成」から改元された元号「令和」の典拠(出典)となった、日本最古の歌集「万葉集」(奈良時代末期)の「時に 初春の令月にして 気淑(きよ)く風和らぎ 梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き 蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」(梅花の歌、三十二首、序文)から抜粋して引用されています。
「でしょましょ」は2019年9月にリリースされましたが、米津玄師さんは「令和」になった直後に立て続けに起きた「大津園児死傷事故」や「川崎市登戸通り魔事件」(2019年5月)、「京都アニメーション放火殺人事件」(2019年7月)などの凄惨な事故・事件が目についたそうです。
さらに気になったのは、その際のネット上の反応。
大きな事件や事故を起こした人に対して怒りの感情がわくのは正常だとしても、正義を盾にしてネット上に書き込まれたコメントは正気を失っているものが多かったとのこと。
「令和」という新しい時代の幕開けに、狂気を帯びたネット上の反応まで含めて「異常な世界」へと突入してしまったのではないか、と危惧したのでしょう。
このような世の中で「平凡に生きる(正常を保つ、中立的な立場でいる)のは難しい」けれども、どうにか気を静めて「踊りましょ」と呼びかけています。
こうなると承認欲求や自己顕示欲の塊だろうが、冒頭のように「踊ってみた」動画をアップするとか、動画の有無にかかわらず、とにかく「踊る」ほうが断然建設的です。
「るる~」の部分は実際にリズムに合わせて体を揺らしていると考えられますが、米津玄師さんの「あたしはゆうれい」(3rdアルバム「Bremen」2015年10月)の「らるら~」という歌詞にもつながるかもしれません。
危険運転に要注意!
獣道 ボロ車でゴーゴーゴー ねえどうしよ? ここどこでしょ?
出典:でしょましょ / 作詞・作曲:米津玄師
ハンドルを手放してもういっちょ アクセルを踏み込もう
「道も車も状態が悪いなか、手放し運転でアクセルを踏み込む」と大惨事になるのではないでしょうか。
1番の「ダンス」の流れから、急に2番で「ドライブ」の話が飛び出したような展開ですが、「令和」になったばかりで起きた「大津園児死傷事故」の影響もあるのかもしれません。
あるいは、何はともあれニュートラルな状態で「踊る」のか、それとも人生の「危険運転」に一点集中するあまり、狂気の方向へ「アクセル全開」で突っ走ってしまうのか、という選択肢が提示されているようにも受け取れそうです。
事故後にネット上で書き込みをした人も、歪んだ正義感が「暴走」して「自分の居場所を見失う=正気を失う」結果に陥っている恐れがあります。
非常にやるせないことばかりで全部嫌になっちゃうな
出典:でしょましょ / 作詞・作曲:米津玄師
今日はいい日だ死んじゃう前に なあなあで行きましょ
るるらったった
2番のサビです。
「やるせないこと」は、やはり「令和」の幕開けとともに頻発した事故・事件をあらわしているでしょう。
どうにも「悪い日々」だからこそ、あえて「いい日」だと対極の状況をイメージすることで、「まあまあ」や「なあなあ」といった、ニュートラルでフラットな「中間の立ち位置」にいられるのではないでしょうか。
ラストに1番のサビ(「るる~」なし)と2番のサビが繰り返されます。
どれほど世の中が「異常」で「非常」でも、自分の心を「正常」に保つことができるのは自分だけ。
どうにか軽やかにステップを踏む「日常」を心がけたいものですね。

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さいごに
令和が始まったのは2019年5月、新型コロナのパンデミックが始まったのは2020年春頃なので、「異常な世界」は加速するばかりともいえる状況です。
米津玄師さんの「中間を心がける」考え方は、ますます役に立つのではないでしょうか。
「まあまあ、なあなあで踊る」というイメージで生き抜きましょう!777