宇多田ヒカルさんのデジタルシングル「誰にも言わない」(2020年5月)の歌詞の意味を考察します。
「サントリー天然水」のCMソングに起用された、ジャジーなR&Bナンバーです。
宇多田ヒカルさんが作詞・作曲・共同プロデュース、小袋成彬さんが共同プロデュースを担当した「誰にも言わない」の歌詞を見ていきましょう。

誰にも言わない 歌詞考察!
描かれているのは危険な恋?

全体的に洋楽と邦楽の垣根を気にせずに聴ける激渋なサウンドです。
大枠ではR&Bの範疇に収まるものの、ゆったりとした出だしはアンビエントな雰囲気すら漂います。
情感たっぷりの愛が描かれたラブソング、歌詞でもR&Bらしさを表現しているのでしょう。
過去を回想するとたくさんの「出会いと別れ」があったということで、恋多き女性像が浮かび上がります。

「タタタ、タタタ」と3連符のリズムで下がるメロディは、「サントリー天然水」のCMのロケ地となった滝の流れも連想できます。
恋に落ちた様子が歌詞だけでなく、サウンドでも表現されていると言えるでしょう。
タイトルの「誰にも言わない」という言葉は意味深です。
何の障害もない恋であれば傷つきませんし、誰かに話しても問題はないはず。
つまり恋多き女性が「過去」の失敗から「学ぶ」こともなく、友だちにも内緒にしなければいけない傷つく恋に走ったイメージです。
具体的に描かれているわけではないので断定はできませんが、何らかの障害がある危険な恋の香りがします。
透明感あふれる「サントリー天然水」のCMとしてはかなり攻めた歌詞ではないでしょうか。

サックスが混ざってくるところがジャズっぽいですね。
英語の部分を和訳すると「友だちには言わない。心配されるとわかっているから。自分に起きたことを誰かのせいにするつもりもない」といった意味になります。
もし友だちに話すと「あんな遊び人に誘われたからって、その気になったらダメだよ。相手が悪い。やめたほうがいい」とでも注意されるような状況でしょうか。
それでも恋多き女性は友だちには秘密のまま、自己責任で危険な恋に身を任せてしまいました。
色気を出すのが狙いだった?

冒頭と同じ、ゆったりと歌うパートです。
「腕時計を外して、ベッド脇に置く」部分に着目すると、大人っぽいシーンが連想できます。
ただ「出会いと別れが多かった」という最初から、必ずしも恋愛について語っているとは限らない、微妙なラインが続いているのがおもしろいところです。
サウンドがR&Bなので、歌詞もディープな恋愛について描きたいものだけれど、そんな「完璧なフリ」は脇に置くという話かもしれません。
危険な恋に落ちたように見せかけて、「傷つくこともあるけれど、人と関わりながら生きていく」など、人間関係について描かれている可能性もあります。

3連符のパートです。
やはり「誰にも言わない」というタイトルが全体を表していて、抽象的な表現のまま具体的な出来事は明かされませんが、それでも雰囲気はどんどん盛り上がっています。
つまり「ワガママな罪深い密会」を連想してしまうということ。
パーカッションやサックスの音色も華やかになり、歌い方も艶っぽいので、宇多田ヒカルさんの術中にハマっている人が多いのではないでしょうか。

続く3連符のパートで、ようやく種明かしをしてくれました。
これまでもずっとラブソングだったとすると、「過去の失敗を恐れたり、躊躇したりすることなく、今すぐ目の前の恋に溺れなければ色気がない」という展開です。
ただ、宇多田ヒカルさんが不倫や複数の相手がいるような危険な恋を本気で肯定するとは考えられません。
つまり、歌詞でもR&Bらしい「色気」を醸し出すのが狙いだったというオチではないでしょうか。
この後「I won’t~」の英語のパートが繰り返されるので、「自己責任で危険な恋を描いた」とも解釈できそうです。
すべては好きな歌のため?

これまでも存分におもしろいサウンドが展開されてきましたが、さらに曲調が変わるという贅沢ぶりです。
ようやく「あなたは私を満足させられる?私には何が必要か、あなたにはわかっているはず。あなたの体が欲しいの」と、完全に男女の恋物語になりました。
「色気を出すのが狙い」という種明かしをした後なので、どっぷり恋物語に浸ることができたようです。

「誰にも言わない」では一方通行の危険な恋を描いたというまとめでしょう。
プライベートでは、不倫や複数の相手がいるようなこじれた恋愛など、なるべく「感じたくない」ものです。
それでもR&Bシンガーソングライターとしては「危険な恋も描けなければ、何も表現できなくなる恐れがある」ということ。
すべては「好きな歌=R&B」のためだったのではないでしょうか。

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さいごに
「誰にも言わない」はビートルズが使用したことで有名なイギリス・ロンドンのアビーロード・スタジオで録音されました。
「危険な恋でも、欲望に忠実になろう」というメッセージは、やはり宇多田ヒカルさんの音楽家としてのあくなき探求心を表していると解釈するのが妥当なようですね。