宇多田ヒカルさん「COLORS」の歌詞の意味を考察します。

COLORS 歌詞考察
筆先が渇くとは?
ミラーが映し出す幻を気にしながら
いつの間にか速度上げてるのさどこへ行ってもいいと言われると
出典:COLORS / 作詞・作曲:Utada Hikaru
半端な願望には標識も全部灰色だ
トヨタのミニバン、ウィッシュ(2003年~2017年)のCMソング「COLORS」。
「ミラー、速度、標識」という車に関連する言葉が散りばめられていて、「願う、望む」という意味の車種名ウィッシュ(WISH)が反映された「願望」という言葉も登場しています。
実際に車を運転しているようでもあり、「ミラーに映し出されるのは幻」とのことで、ドライブを人生の旅になぞらえているような印象です。
タイアップ曲でありながら「どのように書いてもいい」と言われるとかえって迷う(標識も全部灰色)という前置きなのかもしれません。
人生について描かれた歌詞だとすると、「鏡に映る虚像と張り合い、忙しい日々を過ごしている。自由にすればいいと言われると、中途半端な願いしかないので、どうすればいいのかわからなくなる」といったニュアンスでしょうか。
炎の揺らめき 今宵も夢を描く
出典:COLORS / 作詞・作曲:Utada Hikaru
あなたの筆先 渇いていませんか
車のCMソングだからといってドライブにこだわる必要はなく、テーマは自由なので、迷いながらも人生にフォーカスし、「ウィッシュ→願望→夢」や「灰色→描く」とつながったイメージです。
「筆先」云々は確信犯的に下ネタも連想させる強烈なフレーズになっているのではないでしょうか。
実際は「半端な願望ではなく、魂の炎を揺らすような夢を描こう。その夢を描く筆先が渇いているようでは、中途半端な人生になるかもしれない」といったメッセージが込められていると考えられます。
あなた(リスナー)に語りかけつつ、自分自身を鼓舞する人生の応援歌のようです。
青い空が見えぬなら青い傘広げて
出典:COLORS / 作詞・作曲:Utada Hikaru
いいじゃないか キャンバスは君のもの
白い旗はあきらめた時にだけかざすの
今は真っ赤に 誘う闘牛士のように
「COLORS」という曲名どおり、「灰色」以外にも「青、白、赤」の色が出てきました。
「車にもさまざまな色があるように、人生というキャンバスにも彩り豊かな夢を描こう」といったところでしょうか。
歌詞の内容も「ドライブ→人生の旅→夢を描く→絵画の色」と「速度を上げて」自由に走り回っている印象を受けます。
晴れ、くもり、雨など、実際の天気にかかわらず、「青い空が見えない気分」のときもあるのではないでしょうか。
たとえばMoMAのスカイアンブレラのような「青い傘」をさすだけで心が晴れるという発想が粋ですね。
「白旗をあげる」という慣用句は負けを認めるときなど、非交戦状態の意志表示として用いられます。
「青い傘」によって心が晴れたら、「あきらめる」まえに「白い旗」ではなく、「闘牛士」が牛を「誘う」ために振る「赤い旗(ムレータ)」を掲げたくなるはずという意味でしょう。
この「誘う」も「筆先」と同じく、意図的に艶っぽい表現をしていると思われます。
失恋から1か月後?
カラーも色褪せる蛍光灯の下
出典:COLORS / 作詞・作曲:Utada Hikaru
白黒のチェスボードの上で君に出会った
まるで重複表現かのような「カラーも色褪せる」は「襟(えり)も色褪せる」という意味でしょう。
「蛍光灯」の紫外線によって衣類などが変色することをあらわしていると考えられますが、そのなかでも襟を引き合いに出し、しかも「カラー」という言葉遣いを選んでいるのは、曲名にちなみ、1番冒頭の「ミラー」と韻を踏むためのようです。
むしろ「人生色々→カラー、COLORS→ミラー」という流れで思いついたのかもしれません。
ともあれ「カラーも色褪せる」ということでモノトーンの「白黒」になり、「白黒」といえば「チェス」とつながります。
1番の「あなた=君」はリスナーのようでしたが、2番に入り、歌物語上の恋人という設定になったのかもしれません。
いずれにしても2人の「出会い(付き合い)」はカラフル(華やか)ではなかったようです。
僕らは一時 迷いながら寄り添って
出典:COLORS / 作詞・作曲:Utada Hikaru
あれから一月 憶えていますか
「僕ら」が「宇多田ヒカルさんとリスナー」なのか、「歌物語上の恋人同士」なのかは「迷う」ところですが、いずれにしても「迷いながら寄り添う付き合い方」を「白黒のチェス」にたとえていて、短期間で別れてから1か月後のようです。
オレンジ色の夕日を隣で見てるだけで
出典:COLORS / 作詞・作曲:Utada Hikaru
よかったのにな 口は災いの元
黒い服は死者に祈る時にだけ着るの
わざと真っ赤に残したルージュの痕
1番の「青、白、赤」という組み合わせが、2番では「オレンジ、黒、赤」に変わりました。
「灰色の標識」に導かれ、「白黒のチェスボード」の上で、信号の色に近い「青、オレンジ、赤」のように進んだり止まったり、右往左往する人生のようです。
「口は災いの元」は元恋人との交際時のケンカをあらわしているのかもしれませんし、下ネタと思われがちな「筆先」のくだりについて後悔している可能性もありそうです。
それでも「わざと残した痕」のようなので、R&B的な艶っぽさへと「誘う」などの意図があるのでしょう。
もう自分には夢の無い絵しか描けないと言うなら
出典:COLORS / 作詞・作曲:Utada Hikaru
塗り潰してよ キャンバスを何度でも
白い旗はあきらめた時にだけかざすの
今の私はあなたの知らない色
「失恋や挫折を経験しても、人生というキャンバスには何度でも色を塗り重ねることができる」と考えると、確かに「あきらめるのはまだ早い」と思えるはず。
元恋人への未練を断ち切ったので、もう「あなたの知らない色」になっているというR&Bの様式美に則ったラブソングらしい結末で締めくくられましたが、そこまで含めて、リスナーに語りかけつつ、宇多田ヒカルさん自身をも鼓舞する「人生の応援歌」になっていたのではないでしょうか。

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さいごに
最初からR&Bらしい艶っぽい表現も含む失恋ソングだったと解釈することも可能ですが、総合的に人生の応援歌と捉えることもできます。
人生も歌詞の解釈も色とりどり、あるいは「誰も知らない色」なのかもしれません。