今回はAimerさんの歌う「蝶々結び」の歌詞を考察します。
透き通る少しハスキーかかった歌声にそっと身委ねたくなる楽曲です。
Aimerさんとは
プロフィールのほとんどは非公開となっている女性シンガーソングライターのAimerさん。
お父様がバンドでベースを担当されていたり、Aimerさん自身も小学生でピアノを習い始めたりと幼い頃より音楽が身近にありました。
15歳の頃に喉の酷使が原因で声帯を傷付けてしまうという過去を持つAimerさん。
その治療の為、半年の沈黙療法を行いますが、その歌えない期間に歌手になりたいという夢をハッキリと自覚したしたそうです。
その後、喉を守るように歌う技術を習得する中で現在のAimerさん独特の声質と歌い方を見出し自分の物にしてきました。
そうして歌い続ける今現在、傷は今だ完治していませんし、完治すると今の声は出なくなってしまうという皮肉な現実の中、Aimerさんは声質の維持を選択し状況を保つ事を選ぶ事となりました。
辛い選択と、努力の中にAimerさんの歌声があると思うと、歌声が一層愛おしく感じますね。
楽曲「蝶々結び」
「蝶々結び」はAimerさんの11枚目のシングルで2016年8月17日にリリースされ、RADWIMPSの野田洋次郎さんが楽曲提供、プロデュースされました。
ちなみに野田洋次郎さんはコーラスにも参加されています。
B面にはRADWIMPS楽曲「セプテンバーさん」をAimerさんがカバーしたものが収録されていますので、オリジナルと聴き比べるのも面白いかなと思います。
蝶々結び 歌詞考察
片っぽで丸を作って しっかり持ってて
もう片っぽでその丸の後ろを ぐるっと回って間にできたポッケに入って 出て来るの待ってて
出てきたところを迎えにきて 「せーの」で引っぱってはじめはなんとも 情けない形だとしても
同じだけ力を込めて羽根は大きく 結び目は固く
出典：蝶々結び / 作詞・作曲：野田洋次郎
なるようにきつく 結んでいてほしいの
蝶々結びの方法を丁寧に説明してくれているような歌詞です。
MVでも、出演者がそれぞれの場面で各々が蝶々結びをしていたりと歌詞とリンクする作りになっています。
楽曲名に流され、てっきり蝶々結びの方法を歌ったバラードだと思いそうになりますが、紐を引っ張る時に「せーの」という掛け声が必要だったり・・・「結びたい」ではなく「結んでいて欲しい」だったり・・・と、小さな違和感が浮かんでは消えていきます。
実はこの違和感が後で生きてきます！
腕はここに 想い出は遠くに
置いておいてほしい ほしいの片っぽでも引っ張っちゃえば ほどけちゃうけど
出典：蝶々結び / 作詞・作曲：野田洋次郎
作ったもの壊すのは 遥かに 簡単だけど
ここから主人公の他にもう一人対象の人が居るのだと気付きます。
過ぎた想い出よりも、触れられる腕つまり、現実に触れられる相手が「ここ」にいる事が主人公にとって大切なんだと訴えています。
蝶々結びをほどく事と人同士が懸命に造り上げる信頼関係を対比させ表現しているのではないでしょうか。
人間関係は力の入れ具合を少し間違えたり、距離を間違えた瞬間壊れてしまいます。
造り上げるのには時間がかかるのに壊す事はとても、とても簡単なうえに一瞬の出来事なのが人間関係だと日々の生活で痛感する方も少なくないはず。
だけどほどく時も そう、ちゃんと 同じようにね
分かってるよ でもできたらね 「せーの」で引っ張ってほどけやしないように と願って力込めては
広げすぎた羽根に 戸惑う羽根は大きく 結び目は固く
出典：蝶々結び / 作詞・作曲：野田洋次郎
なるようにきつく 結んでいてほしいの
一瞬で壊れてしまった人間関係に対して、お互い納得し円満に距離を取る事も長い人生の中起こりうる事案かもしれませんね。
どちらかが重い荷物を背負わなければならない事は無くて、同じ分だけ「せーの」でお互いが離れればいいのです。
足枷を残さない別れ方をすれば、またいつか必要ならば巡り合い同じ時を過ごせるかもしれません。理想のお別れの形ですね。
離れていかないようにと、相手と関わる距離感や相手の事を思い過ぎて思いやりを忘れた時、力加減を間違って出来る不格好な蝶々結びの様な二人の関係になってしまうのではと思います。
羽根は大きく結び目は固くは、綺麗な蝶々結びの形を円満な人間関係に例えている様に感じました。
結び目はお互いの間にある繋がりでつながりで、二人の夢や希望、想いは羽根の部分で表していると考えるのはどうでしょうか。
夢はここに 想い出は遠くに
気付けばそこにあるくらいがいい黙って引っ張ったりしないでよ 不格好な蝶にしないでよ
出典：蝶々結び / 作詞・作曲：野田洋次郎
結んだつもりがほどいていたり 緩めたつもりが締めていたり
大切なのはこの先の未来であって、想い出はふとした時に眺めるぐらいがちょうどいいと、未来を見据えた前向きな姿が浮かびました。
そして大切な人間関係を維持する事の難しさが歌われています。
どちらかが勝手に自己中心的な行動をとれば蝶々結びをほどく様に信頼関係は崩壊。
間にある大切なものの形を変えてしまっても二人で結んだ蝶々結びは解けてしまいます。
相手に良かれと思ってした事が実は自分本位な優しさで、それが相手を傷付けてしまう事もあるでしょう。
この蒼くて広い世界に 無数に 散らばった中から
別々に二人選んだ糸を お互いたぐり寄せ合ったんだ結ばれたんじゃなく結んだんだ 二人で「せーの」で引っ張ったんだ
出典：蝶々結び / 作詞・作曲：野田洋次郎
大きくも 小さくも なりすぎないように 力を込めたんだ
ここで野田洋次郎さんのコーラスが加わり、最初に感じた違和感の答え合わせの様な歌詞が広がり視界がはっきりする感じがします。
私は最初恋愛関係にある「二人」の事を歌った楽曲だと思ってましたが、野田洋次郎さんのコーラスが入る事で歌詞の世界の奥行きがぐっと増し、恋愛関係に限定されない壮大な人間関係を歌っているように感じました。
数えきれない人の中から出会った二人。
それは恋人だけでなく、友人も仕事の同僚も、学校の恩師も、家族すら沢山の偶然と必然が重なり巡り合えた「相手」なのではないでしょうか。
「たぐり寄せ合った」「結んだんだ」という表現から人と人の出会いは受け身な事ではなく能動的な事だと表現されています。
身の回りにいる人達は自分から選び、また自分は相手から選ばれたのだと考えると日々の人間関係がもっと愛おしく感じられそうですね。
二人で「せーの」と、作った蝶々結びという人間関係を二人の中で心地よい大きさに造り上げ今も大切に保ち続けているという、最後は前向きな気持ちが生まれる楽曲になっているのではないでしょうか。
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さいごに
いかがでしょうか。Aimerさんの歌う「蝶々結び」について考察してみました。
複雑で脆く、愛おしい人間関係を蝶々結びに例えた素敵な歌詞をAimerさんの繊細な歌声で歌い上げた名曲の一つだと感じる楽曲でした。
人間関係に悩んだ時、躓いた時に聴くとまた頑張る力をくれそうな気がしますね！
