藤井風さん「調子のっちゃって」の歌詞の意味を考察します。
1stアルバム「HELP EVER HURT NEVER」(2020年5月)の収録曲。
藤井風さんが作詞・作曲、Yaffleさんが編曲した「調子のっちゃって」の歌詞の意味をチェックしましょう。

調子のっちゃって 歌詞考察
調子にのる?リズムにのる?
あなたの言葉は この鼻を伸ばす
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
私だって 私だって
ついハイになって
曲名の由来は芸人ゆりやんレトリィバァさんのネタのフレーズとのことですが、コミカルではなく、しっとりとしたR&B、ネオソウルに仕上がっている「調子のっちゃって」。
スネアドラムのタイトな(拍どおりのきっちりとした)ビートに対して、ボーカルのリズムがJ・ディラのもたつくディラビート的に「あなたのっこっとっば~は」や「このはなぁをっのっば~す」などと揺らいでいるため、グルーヴ(ノリ)が感じられます。
つまり「調子にのる」とは「リズム(律動→調子)にのる」という意味なのでしょう。
「あなたの言葉が、私の鼻を伸ばす」という意味の歌詞は音楽的な解説にもなっていて、実際に「ドラムのビートに対して、藤井風さんのボーカル(言葉)が伸びている」ところが秀逸です。
「ついハイになる(ゴキゲンになる)」のも無理はないでしょう。
歌物語としては「あなたのお世辞にのせられて、ゴキゲンになっている私」の様子が想像できます。
着色の言葉 無味無臭の心
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
行き違って 行き違って
調子のっちゃって
冒頭の「言葉」と「この鼻」、「私」と「ハイ」のように、「着色」と「無味無臭」、「言葉」と「心」、「行き違って」と「調子のっちゃって」も微妙に韻を踏んでいるというか、「言葉」の響きにこだわっていることが感じられます。
これらも「リズムにのる」コンセプトの一環でしょう。
「華やかに彩られた言葉には、心がこもっていない」こともありますが、真に受けて浮かれているようです。
さながら
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
裸のまま透明な服を着た王様だ
はみ出したったモノを隠す場所もない
調子のっちゃって
アンデルセン童話「裸の王様」を引き合いに出しているのでしょう。
本当は何もないのに、詐欺師に「愚か者には見えない服」と説明されたため「見えない」とは言えず、「透明な服」を着たふりをする「裸の王様」の物語です。
立場上、誰も批判や注意をしてくれなくなった状態のことをあらわしています。
意味的には「はみ出した鼻(天狗のように伸びた鼻)」とつなげたいところだったと思われますが、「私だって」や「行き違って」と言葉の響きを合わせるために「はみ出したったモノ」としたのでしょう。
「調子にのっちゃって」というキラーフレーズ引き立たせるためには「はみ出しちゃったモノ」とするわけにもいかず、「たった」という「言葉」が実際に「はみ出している」印象を受けます。
せっかくコミカル路線ではなく、正統派のR&Bテイストを築いてきたのに、下ネタにも受け取れるお笑い要素でオチを作る(はみ出す)ところも「調子にのった裸の王様」的といえるかもしれません。
歌物語の意味と言葉の響きの両立
瀬戸際の見栄が この首を絞める
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
裸足だって 裸足だって
引き返せなくて
歌物語としては「調子にのる自分への戒め」が描かれていますが、「リズムにのる(言葉の響きにこだわる)」という裏テーマもあるはずです。
つまり1番冒頭の「私だって」と韻を踏むために、2番冒頭の「裸足だって」を思いつき、「裸足」につなげるために「裸の王様」を引き合いに出したとも考えられるでしょう。
もちろん「調子にのる」という意味でも「裸の王様」はリンクしています。
ただ「歌物語の意味」と「言葉の響き」を両立させたいという「見栄」を張り、「はみ出す下ネタ」を繰り広げたことで「首を絞める」展開となり、もう「引き返せない」と嘆いているのかもしれません。
まやかしの宝 見せかけの光
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
風に乗って 風に乗って
どっかいっちゃって
「乗って」も「どっかいっちゃって」も曲名と韻を踏んでいるというか、「っ」という促音(つまる音)がスタッカートやスイング(バウンス)のリズムのようです。
「風に乗る=藤井風さんのボーカルのリズムにのる」というニュアンスも込められているかもしれません。
気付けば
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
優しかった いつも支えてくれた 信じてた
あの子の顔 探しても見当たらない
調子のっちゃって
調子のっちゃって
歌物語としては、「着色の言葉」や「透明の服」のような「偽の宝」にだまされないよう心がけていたつもりでも、いつのまにか「調子にのる」状態になっていて、身近にいた「あの子」が「風に乗って」いなくなっていたという展開でしょう。
調子にのってから気づいても遅い
もう二度と犯さない
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
恥ずかしいカン違い
自分で一人 生きてきたって 果たしたって
当たり前なんてない
自分のモンなんてない
その一瞬の隙を運命は 見逃してくれない
ちょっと待ったって!
「歌物語の意味」としては、「自分一人で生きているとか物事を成し遂げたといった勘違いはもうしない」と反省しているようです。
「言葉の響き」としては、「はみ出したったモノ」という「恥ずかしいカン違い」のうち、「たった」は「私だって、裸足だって」に続く「生きてきたって、果たしたって、待ったって(待ってあげて)」の連発、「モノ」は「カン違い、自分のモン」というカタカナ表記で回収することにより、どうにか「見逃せる前フリ」として成立させたい意図が伝わってきます。
裸のまま透明な服を着た王様だ
出典:調子のっちゃって / 作詞・作曲:藤井風
はみ出したったモノを隠す場所もない
調子のんないで
優しかった いつも支えてくれた 信じてた
あの子の顔 探しても見当たらない
調子のっちゃって
調子のっちゃって
最後に「裸の王様」のくだりが繰り返され、今さら「調子のんないで」と思っても「運命は見逃してくれない、待ってくれない」という結末でした。

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さいごに
どれほど好きだとしても、アーティストがお笑いに手を出すと「裸の王様」になりかねないので「調子にのらない」ほうがいいかもしれませんね。
藤井風さんは「リズムにのる」という音楽の本業を極めてくれることでしょう。