宇多田ヒカルさん「Automatic」の歌詞の意味を考察します。

Automatic 歌詞考察
言葉を失った瞬間とは?
七回目のベルで
受話器を取った君
名前を言わなくても
声ですぐ分かってくれる唇から自然と
出典:Automatic / 作詞・作曲:Utada Hikaru
こぼれ落ちるメロディー
でも言葉を失った瞬間が
一番幸せ
宇多田ヒカルさんのデビュー曲で、バラエティ番組「笑う犬の生活-YARANEVA!!-」(1998年10月~1999年9月)および「笑う犬2008秋」(2008年9月)のエンディングテーマ「Automatic」。
語り手にとって「君」は付き合い始めたばかりの恋人でしょうか。
「受話器」という表現が時代がかっているように感じるかもしれませんが、「Automatic」がリリースされた1998年12月当時、スマホは普及しておらず、着信相手の名前は表示されない固定電話が一般的でした。
呼び出し音(ベル)の回数を数えているくらいなので、電話をかけた語り手は「君」が電話に出るのを待ち構えているというか、とにかく「君」と話せることが嬉しい様子です。
「七回目」というのは早くも遅くもない絶妙な回数で、「君」は語り手より落ち着いているけれども、それなりに電話がかかってくることを期待していた可能性もあります。
とにかく語り手が喜んでいるのは、「君」が「声」だけで自分を認識してくれたこと。
その流れで「メロディー」という音楽用語が登場しているので、「言葉を失った瞬間」は「リズム」をあらわしているのではないでしょうか。
もちろん「会話が続いている状態=メロディー」に対する「無言の状態=言葉を失った瞬間」という意味でしょう。
ただ「な・なかいめの」や「ベ・ルで」など、「言葉を失った瞬間」がある「リズム」が特徴的な「メロディー」から始まっています。
しかも「声=音」の認識に対する喜びが表現されているので、R&B(リズム&ブルース)らしいラブソングの形式に則りつつ、「メロディー」よりも「リズム」重視という音楽の方法論が宣言されていると考えられるでしょう。
嫌なことがあった日も
出典:Automatic / 作詞・作曲:Utada Hikaru
君に会うと全部フッ飛んじゃうよ
君に会えない my rainy days
声を聞けば自動的に
sun will shine
ラブソングとしては「恋人の君に会うと嫌なことがすべて解消され、会えない日でも電話の声を聞くと自動的に(Automatic)泣き顔から笑顔に変わる」といった意味です。
ただ、ここでも音楽的な方法論が示唆されていると考えられます。
つまり「君=音楽」であり、「音楽を聞けば嫌なことがすべて解消され、自動的に笑顔になる」という話です。
実際「嫌な~全部」がつらつらとした「メロディー」になっていて、「フッ飛んじゃうよ」が「言葉を失った瞬間」のある「リズム」になっています。
しかも意味内容とも合致していて、本当に「嫌なことがフッ飛ぶ」ようなサウンドとして表現されているところがおもしろいでしょう。
「君に会えない my rainy days(雨=涙)」はアクセントの強弱が激しい「リズム」重視、「声を~shine(晴れ=笑顔)」はつらつらとした「メロディー」という点でも、歌詞の意味がサウンドでも表現されているといえます。
It’s automatic
側にいるだけで
その目に見つめられるだけで
ドキドキ止まらない
(I don’t know why)
Noとは言えない
I just can’t helpIt’s automatic
出典:Automatic / 作詞・作曲:Utada Hikaru
抱きしめられると
君とParadiseにいるみたい
キラキラまぶしくて
(I don’t know why)
目をつぶるとすぐ
I feel so good
It’s automatic
恋愛も音楽もどちらも「キラキラしたドキドキ感」があるのではないでしょうか。
その言葉の意味が「メロディー」の「リズム」でも実際に表現されているところが、宇多田ヒカルさんの真骨頂。
「抱きしめられると(聞くだけで)自動的に天国にいるみたいな気分になる音楽」をやっていきますよ、という宇多田ヒカルさんの宣言として受け止めることができます。
歌詞の意味を頭で理解するのではなく、「メロディーのリズムに乗るだけで自動的に意味も伝わる音楽」と解釈することもできるでしょう。
しっかりR&Bらしいラブソングにもなっていて、音楽的な方法論も提示しつつ、実際にサウンドで表現しているところが神ワザです。
恋愛の話?音楽の話?
あいまいな態度が
出典:Automatic / 作詞・作曲:Utada Hikaru
まだ不安にさせるから
こんなにほれてることは
もう少し秘密にしておくよ
「あいまいな恋人の態度によって、まだ語り手は不安になる」という話のようです。
確かに「七回目のベルで受話器を取る」のが「早いのか(語り手のことを好きなのか)、遅いのか(冷めたのか)はあいまい」とも考えられます。
あるいは「恋愛の話なのか、音楽の話なのか、宇多田ヒカルさんのあいまいな態度がリスナーを不安にさせるから、こんなに音楽にほれていることはもう少し内緒にしておくよ」と解釈することもできそうです。
やさしさがつらかった日も
出典:Automatic / 作詞・作曲:Utada Hikaru
いつも本当のことを言ってくれた
ひとりじゃ泣けない rainy days
指輪をさわれば
ほらね sun will shine
音楽の話は「内緒」ということで、ここはストレートに恋愛の話でしょう。
「恋人の君にもらった指輪に触れるだけで笑顔になる」ようです。
It’s automatic
側にいるだけで
体中が熱くなってくる
ハラハラ隠せない
(I don’t know why)
息さえ出来ない
I just can’t helpIt’s automatic
出典:Automatic / 作詞・作曲:Utada Hikaru
アクセスしてみると
映るcomputer screenの中
チカチカしてる文字
(I don’t know why)
手をあててみると
I feel so warm
当時はパソコン画面がブラウン管から現在の液晶ディスプレイに変わった頃でした。
ただ「文字がチカチカし、手をあてると熱い(so warm)」ようなのでブラウン管と思われます。
パソコンで受信した「君」のメールの「文字に手をあてると熱い」という意味でしょう。
あるいは液晶ディスプレイで、実際に熱を帯びているわけではないけれども、電話で「声=音」を聞くのと同じように、「君=音楽」の言葉(歌詞)に触れるだけで心が熱くなるという話かもしれません。
「アクセス」する相手は「パソコン、恋人、音楽、リスナー」のどれもが当てはまり、「あいまい=チカチカしてる」ともいえそうです。
It’s automatic
側にいるだけで
愛しいなんて思わない
ただ必要なだけ
(I don’t know why)
淋しいからじゃない
I just need youIt’s automatic
出典:Automatic / 作詞・作曲:Utada Hikaru
抱きしめられると
君とParadiseにいるみたい
キラキラまぶしくて
(I don’t know why)
Wow wow yeah
I feel so good
It’s automatic
「側にいるだけで~ただ必要なだけ」という点を踏まえると、恋愛の話というより音楽の話に着地した印象を受けますが、いかがでしょうか。

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さいごに
宇多田ヒカルさんの音楽愛については、メロディーのリズムを含むサウンドを聞けば自動的に伝わるはず。
ただ、頭で意味を理解したいタイプの人にも、「恋愛になぞらえて音楽愛を語っていますよ」とか「歌詞の意味はリズムなどのサウンドでも表現していますよ」とわかりやすく言葉で説明してくれています。
そのため幅広く受け入れられているのではないでしょうか。