ドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」の主題歌となっているヨルシカの「アルジャーノン」、が2023年2月6日にリリースされました。
今回はこちらの楽曲の歌詞を考察していきたいと思います。
ヨルシカとは
ヨルシカは2017年にコンポーザーのn-buna(ナブナ)さん、ボーカルのsuis(スイ)さんで結成され、2019年にメジャーデビューを果たしているロックバンドですが、n-bunaさんの中では「バンド」という認識ではなくヨルシカという「器」の中にいる「表現する二人」という認識だそうです。
またn-bunaさん、suisさんの素性はほとんど伏せられ表には出てきておりません。
それは自分たちの作り出す作品が、作者のイメージにより左右されたくないという思いからの拘りだそうです。
純粋に、ヨルシカの生み出す作品だけを見て欲しいという真っすぐな気持ちが伝わりますね。
2020年には「日本ゴールドディスク大賞ベスト5ニューアーティスト」を受賞されました。
2023年4月5日には音楽画集「幻燈」のリリースを控えており、とても楽しみです。
ちなみに音楽画集とは、スマートフォンやタブレットを絵にかざすと楽曲を聞く事が出来るという「聞ける画集」がコンセプトである新しい仕組みです。
楽曲 アルジャーノン
2023年2月6日リリースされ、広瀬すずさん主演のドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」の主題歌に使用されています。
広瀬すずさんもこの楽曲を役とリンクする、素敵な楽曲という風に、絶賛しており物語の中に溶け込む楽曲になっているのかなと感じました。
ヨルシカとしては「迷いながらも出口を目指して進む姿が僕には少し眩しい。そういう曲です」とコメントを発表しています。
夕暮れに、手をつなぐ
主演に広瀬すずさんを迎え、TBS系列で2023年1月17日から放送中のドラマで主人公と共に物語を構成する青年役を永瀬廉さんが演じています。
恋人を追って状況してきた主人公、浅葱空豆(あさぎそらまめ)はなんと破局してしまいます。
一方、永瀬廉さん演じる海野音(うみのおと)はコンポーザーとして活動するも、夢の行き詰まりを感じ人を好きになれない事がうまくいかない原因ではないかと考えるようになっていました。
それぞれの人生を背負った同じ23歳という二人はひょんなことから一緒に暮らす事になってしまいます!
二人の背負った人生は交差していく事になるのでしょうか・・・。
脚本を書いた北川悦吏子氏は最初「夜」をタイトルに使用していましたが、広瀬すずさんと永瀬廉さんのイメージは「夕暮れ」だったことから「夕暮れに、手をつなぐ」に変更され、ストーリーも暗めの話から大幅に変更されたとの事で、楽曲と共に注目したい作品です。

アルジャーノン 歌詞考察
貴方はどうして僕に心をくれたんでしょう
貴方はどうして僕に目を描いたんだ
空より大きく 雲を流す風を呑み込んで
僕のまなこはまた夢を見ていた裸足のままで
出典:アルジャーノン / 作詞・作曲:n-buna
主人公の中の何かが変わったと分かる歌いだしですね。
「どうして心をくれたんでしょう」「どうして目を描いたんだ」自分が変わった事で今まで知らなかった感情に心揺さぶられたり、見えなかったものが見えてくることは嬉しくもあり、同時に心の負担にもなりうるもの、ではないでしょうか。
恋を知れば、人を好きになる事は嬉しくもあり、時に悲しく苦しいものです。
そんな矛盾した感情を変化と呼ぶという事を表しているのではと思いました。
知らなかった感情に揺さぶられながら、遠くを見ている主人公。
今まで忘れていた夢を、また見る事が出来るかもしれないと、考えます。
「裸足のままで」とは気負わず、ありのままの自分でという意味だと捉えました。
貴方はゆっくりと変わっていく とても小さく
少しずつ膨らむパンを眺めるように
貴方はゆっくりと走っていく
長い迷路の先も恐れないままで貴方はどうして僕に名前をくれたんでしょう
貴方はどうして僕に手を作ったんだ
海より大きく 砂を流す波も呑み込んで
小さな両手はまだ遠くを見てたあくびを一つ
出典:アルジャーノン / 作詞・作曲:n-buna
そして、あなたも変化している、と視線をうつします。
その変化はゆっくりで、とても小さな時間の積み重ねで、そばでじっと見ていなければ分からない。
そう、まるで膨らんでいくパンのように。
主人公が眺めている「あなた」は前をしっかり見据えて、ゴールの見えない迷路のような人生をしっかり歩ける人なのでしょう。
そんな「あなた」が呼んでくれる名前は自分の名前なのに初めて聞くかのように新鮮で愛おしくて、そしてあなたに触れられる手がある事が嬉しい、と歌っています。
あなたの流す大粒の涙も受け止めたい、と主人公は思っているのが伝わりますね。
しかし、現実の主人公はまだまだ頼りなくて、小さくて、あなたではない何処かを見てしまっていたのです。
ここで、あくびを一つ。
あくびと聞くとどうしても、暇だったり眠かったりというイメージがありますが、ここのあくびとは気持ちを切り替える為に伸びをした時に零れたあくびだと、私は読み取りました。
僕らはゆっくりと眠っていく
とても長く 頭の真ん中に育っていく大きな木の
根本をゆっくりと歩いていく
長い迷路の先を恐れないようにいつかとても追いつけない人に出会うのだろうか
出典:アルジャーノン / 作詞・作曲:n-buna
いつかとても越えられない壁に竦むのだろうか
いつか貴方もそれを諦めてしまうのだろうか
ゆっくりと変わっていく
ゆっくりと変わっていく
ゆっくりと変わっていく
ここで主語は「僕ら」に変化、今までただ眺めているだけだった「あなた」が「ゆっくり眠ってゆく」で主人公のそばに寄り添っているイメージに変わりますね。
大きな木は多方向に枝分かれした人生を表しているのかなと考えます。二人がいるのはまだ「根本」なので始まったばかりの「今」という事ではないでしょうか。
二人ゆっくり歩くことで一歩一歩確実に踏みしめ、見えない未来を恐れず歩けるという事かなと思います。
夢に傷付いた事のある主人公。
「あなた」もいつか、どうしても追いつけない人に出会ったり、越えられない壁に竦んでしまい夢を諦めてしまう事があるのだろうか、と心配しているのが伝わりますね。
確かに、「夢」とは素敵な言葉であるのは勿論ですが、同じぐらい凶器になってしまう事もあります。
しかし、受け手(自分自身)がゆっくり変われば夢の変化に対応する事は出来るのです。
僕がゆっくりと変わって、そしてあなたもゆっくりと変わる。そうすれば、躓いた時に休む余裕や止まらず歩き続ける事が出来るはず、と主人公は思っています。
僕らはゆっくりと忘れていく とても小さく
少しずつ崩れる塔を眺めるように
僕らはゆっくりと眠っていく
ゆっくりと眠っていく貴方はゆっくりと変わっていく とても小さく
出典:アルジャーノン / 作詞・作曲:n-buna
あの木の真ん中に育っていく木陰のように
貴方はゆっくりと走っていく
長い迷路の先も恐れないままで
確かに迷いながら
ゆっくりと忘れていく・・・一体何を忘れていくのでしょうか?
私はそれぞれが抱えた過去の傷だったり涙だったりを指しているのではと考えました。
二人一緒にいる事でゆっくり、少しずつですが、傷は癒えて辛い過去はようやく「思い出」に変わっていくのでしょう。
その変化を、目の前に立ちふさがっていた塔がゆっくりと崩れていく光景に例え、そして「ゆっくりと眠っていく」で二人寄り添いながら崩れ行く塔を眺めている様子がイメージできますね。
そこには確かに「安心」があるように思います。
主人公の大切な「あなた」はゆっくりと成長していきました。
「木陰のように」で主人公にとって心休まる存在である事が分かります。
「あなた」は先の事を恐れずに真っすぐ歩ける人、だけど本当は深く悩みながら、迷いながら歩く人であるという事を、僕は知っているのです。
なぜなら、ずっとそばで見守っているから。

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さいごに
いかがでしょうか。
TBSドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」の為に書き下ろされたヨルシカの「アルジャーノン」の歌詞を考察してみました。
情報がほとんど公開されていないヨルシカだからこそ、何色にも染まる余白を感じた楽曲だったのではないでしょうか。
伸びのあるsuisさんの澄んだ歌声に背中を押されるような、優しくも力強い楽曲だったと感じています。