工藤静香さん「嵐の素顔」の歌詞の意味を考察します。

嵐の素顔 歌詞考察
嵐を起こしたい理由とは?
嵐を起こして
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
すべてを壊すの…
工藤静香さんの7thシングル「嵐の素顔」(1989年5月)は強烈な頭サビから始まります。
石原裕次郎さん主演の映画「嵐を呼ぶ男」(1957年)およびその主題歌(1958年2月)の女性版のような激しい歌詞です。
人間が自然現象を引き起こすことは物理的に難しいと思われますが、それを承知で何もかも破壊したい衝動に駆られているのでしょう。
極限まで自暴自棄になるほどの何かが起きたと考えられますが、いったい何があったのでしょうか。
「嵐を起こす」という激しい表現に込められた真意と併せて探っていきましょう。
「君は素敵だから 一人で平気さ
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
明日になれば また新しい
恋に出逢えるだろ…」
どうやら語り手の女性は彼氏に振られたようです。
その彼氏が別れ際に語ったセリフが上記のかっこでくくられたパートでしょう。
本当に語り手のことを「素敵」だと思っているのなら付き合い続けるはずですが、振る相手にも嫌われたくないのか、お世辞でも褒めるのが優しさだと勘違いしているのか、かっこつけているだけなのか、いずれにしても罪作りな言葉を残しました。
自分と別れても「一人で平気」なタイプだし、魅力的な女性だからすぐに新しい彼氏ができるはずだという言い分です。
語り手を振ることに対して罪悪感を抱きたくないのかもしれません。
あるいは本気で自分と別れても大丈夫(傷つかない)と考えている可能性もあります。
強い女(ひと) 気取る くせがついたのは
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
みんな そう あなたのせいよ
少し背のびしてた
元カレとなった「あなた」はやんちゃなタイプ、大人っぽいタイプ、あるいは年上だったのでしょうか。
そんな「あなた」に似合うように「強い女性」のフリをしていたようです。
そのため「別れても大丈夫」と思われてしまったことが判明しました。
「弱い女性」なら自分がそばにいて守ってあげなければいけないけれど、そうではないから「平気」なはずということですね。
語り手の「背のび」が裏目にでてしまいました。
冷たいピリオド 笑っちゃうね
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
人さし指 空に向け 鉄爪(ひきがね)を引きたい…
空が落ちればいいの
手を銃のポーズにして空に向けて撃ったところで空は落ちませんが、「嵐を起こす」ように「鉄爪を引きたい、空が落ちればいい」と自暴自棄になっています。
「強い女性」のフリをしたことが「別れても平気」と思われる原因になったので、本当に「強い女性」なら「嵐も起こせるし、銃も撃てるし、空も落とせる」とやけになっているのでしょうか。
この後、頭サビが繰り返されます。
顔の縦と横のラインに沿って、手をL字に動かす振り付けが披露されるのは、1番と2番のあいだの間奏です。
子供のような素顔を見せたかった
空車の赤いサイン 流れる街角
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
どこをどう歩いていたのか
海が見えてきたわ
彼氏に振られた語り手は「街」をさまよった挙句、「海が見える」ところにたどり着きました。
「空車の赤いサイン」はおそらくタクシーのことでしょう。
あるいは駐車場かもしれませんが、いずれにしても「空きがある、客待ち状態」をあらわしています。
失恋したところなので、「恋人がおらず空きがある、新しい出会いを待っている状態」という意味でしょう。
「空車のタクシーが街を流すように、誰かを求めて歩き回った」と考えられます。
「街」から「海」までがどれくらいの距離だったのかはわかりませんが、失恋のショックで混乱して、どこにいるのかもわからなくなるほど当てもなく歩いたのではないでしょうか。
見知らぬ人でも かまわないから
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
ふるえるこの肩どうぞ
抱きしめて欲しいの
「誰でもいいから抱きしめて欲しい」と自暴自棄になっています。
しかも「ふるえる」ほど落ち込んでいて、決して「強い女性」ではなかったことがわかるでしょう。
元カレが語り手のこうした一面を知っていたら振らなかったかもしれませんし、少なくとも別れ際の残酷なセリフは違ったものになっていたと思われます。
ふいに頭上かすめ ジェットが飛ぶ
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
心細さを集めて 波にほおり投げた
海が割れればいいの…
たどり着いた「海が見える」ところは飛行場の近くだったのでしょうか。
語り手の願いどおりに「空が落ちる」ことはないにしても、思いがけず低い位置で「ジェット機」が飛んだら驚くでしょう。
失恋のせいか、ほとんど迷子状態だからか、「ジェット機」に驚いたためか、いずれにしても不安になっていますが、それでも「心細さを波に投げて、海が割れればいいと願っている」のは強がりかもしれません。
子供の素顔で 泣きたい夜なの
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
心細さを集めて 空にほおり投げた
明日などいらないわ…
「嵐を起こす」などの激しい表現に引っ張られてきましたが、曲名は「嵐の素顔」でした。
「嵐」のように「強い女性のフリをするクセ」は元カレの影響で、しかも「別れても平気」と誤解される原因になったので、「素顔で泣きたい」というオチです。
「明日などいらない」も強がりでしょう。
嵐を起こして
出典:嵐の素顔 / 作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利
すべてを壊すの
嵐を起こして
素顔を見せるわ
「すべてを壊したい」ほど自暴自棄になっていたのは「子供のように心細い素顔」そのものだったのでしょう。
「嵐を起こして素顔を見せる」ので「嵐の素顔」という曲名になっていました。
これからは「嵐を起こさずに(自暴自棄にならずに)素顔を見せる」ことができるといいですね。

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さいごに
おニャン子クラブ時代のおバカキャラやヤンキーキャラから一転して、ソロ歌手として本格的な歌唱を披露するようになったところも工藤静香さんの「嵐の素顔」といえるかもしれません。
「第73回NHK紅白歌合戦」(2022年12月)では「35周年SPメドレー」として、長女のフルート奏者Cocomiさんと共に「嵐の素顔」と「黄砂に吹かれて」が披露されました。