今回はドラマ『私たちはどうかしている』の主題歌にもなった東京事変『赤の同盟』の歌詞について考察していきます!
MVの冒頭では『Alianza de sangre』とスペイン語のタイトルが記載されています。これは「血の同盟」「血盟」と訳され、「血をすすり合い、固く誓い合うこと」を意味します。
東京事変は『赤の同盟』のリリースに際して次のようにコメントしています。
「今回は目眩く原作と華やかな配役に否が応でも期待高まる新作ドラマ主題歌をご注文くださり、ありがとうございます。
昨今人と人との結び付きを物理的なぶぶん以外で感じ、捉えるべき状況が繰り広げられています。しかしもともと他者を慮るには並々ならぬ知性と優しさが要りますよね。全く異なる都合を抱える者同士、いかに差し障ってゆけるか切欠をもたらす本ドラマ。みなさんといま分かち合いたいものです。
どんなときも愛を込めて。東京事変2〇2〇」
コロナ渦で他者との直接的なかかわりが減少した昨今を踏まえて、誰かを慮る大切さに言及しています。つまりはドラマにも触れつつ、人との絆を考え抜いた楽曲になっているということでしょう。
ドラマ『私たちはどうかしている』
主人公は「光月庵」の和菓子職人の娘・花岡七桜(浜辺美波)。七桜は光月庵の跡継ぎ息子の椿(横浜流星)に出会います。二人は同い年とのことから、次第に惹かれ合い初恋へと発展。
ある時、椿の父である光月庵の若旦那が何者かに殺害されます。七桜の母親が警察に逮捕され、七桜は光月庵を追い出されることに。七桜と椿はお互いを憎しみ合うことになってしまうのです。
15年後、ある男性から、七桜に宛てられた「私は何もやってない」という母の手紙を受け取ります。
七桜と椿は和菓子作り対決の場面で再会。椿には許嫁がいましたが破談にするためそのに七桜にプロポーズ。七桜は母の無実を証明すべく、椿の申し出を受け入れることにしますが、椿の母親からの嫌がらせなどによって苦難を強いられていくのです。
愛憎が渦巻くミステリーラブストーリーです。

『赤の同盟』歌詞考察
世界平和を祈る「アーメン」

”アーメン”とはキリスト教の祈りの中で唱えられる言葉。祈願を表す単語です。
冒頭から全人類の平和を祈っているのが窺えますね。
何が起きてもそれに自ら乗ることで騒ぎを大きくせず、静かに淡々とすることで世界の沈静化を願っているのでしょう。
「血盟」を意味するように、全人類と手を取り合って平和を守り抜く決意のようなものが感じられます。
世界を皮肉る「ガッテム」

東京事変が「平和」を祈るということは、現在の世界は平和から遠く離れた争いばかりの場だからにほかありません。コメントにあるように「他者を慮る知性や優しさ」が欠如していると言っても過言ではないでしょう。
どこかで炎上が起きれば、それを火消するよう再び争いが生まれる。そんな現状を危惧しているのです。
”ガッテム”とは「くそったれ」という意味。先ほどの”アーメン”とは打って変わって皮肉めいた単語ではないでしょうか?
全く平和になろうとしない人々を目にして、呆れかえっているのでしょう。
自分の弱点には見向きもしない現代人へ

先ほど”ガッテム”と吐き捨てながらも「一旦落ち落ち着こう」と、楽曲はBメロに入ります。
人と人の間に続く緊張状態を排し、すべての邪念を振り払うのが大事だと説きます。
他人との争い、扮乱を収めるためには、自分から積極的に動くのが大事ですよね。
他人を責める前に、自身の襟を正そうといった具合でしょうか。
”弱点は断固正視しないもんね”とは、私たちを含み人間が自分の弱点には目をつむり、他人の弱点にだけはああだこうだと文句を言う様子を伝えているように思います。
しかし、そんな態度では自分自身を見失うと東京事変は警鐘を鳴らしています。
思い込みで判断しない賢さを

「あれが好き」「これが好き」…。そんな定義や価値基準は、思い込み(バイアス)によって歪んでしまうので、極めて不毛な議論なのでしょう。
『私たちはどうかしている』においても七桜と椿の愛憎は、善悪のつけられない感情。いちいち決めつけていてもお互いの関係性の根本には迫れないのではないでしょうか?
”よって言語を経由しない原初の衝動を呼び覚ましたい思い出したい”
これは、赤ちゃんが両親を純粋な気持ちで愛し求めるようなことを指すのだと思います。
大人になって身に付いた打算に基づく思考ではなく、心の底から沸き上がる感情に従って他人に接していきたい。その大切さが説かれているのではないでしょうか。
疑いを超える信頼がほしいのに

今まで「他人との関係」を俯瞰的に物語ってきましたが、ここでは極めて繊細な心に触れられています。
愛している人に対して「裏切られるのではないか?」という恐怖心、懐疑心について言及されています。
「大好きな恋人が浮気していないか」
「親友に裏切られないか」
愛すれば愛するほどに襲い掛かってくる恐怖は心の中に渦巻いてしまうもの。まさに”制御不能”です。
そこで東京事変は”早よう捕まえてくれ まだ知り合えてない”と歌います。
これは疑心暗鬼を超える、強い信頼に基づいた関係になりたいという意味でしょう。
まさに「血盟」の関係を結びたいと思っているのです。
”遊ぶ関係”ならそれ相応の礼儀を

東京事変は「全く異なる都合を抱える者同士、いかに差し障ってゆけるか」とコメントをしています。事情の異なる他者をどう慮って生きていくか、問うているのです。
2番の冒頭では”弄ぶにもエチケットを狡猾な罠で釣ってはいけません”と言います。
「軽薄な関係迫るにもそれ相応の礼儀が当然必要でしょ?」と言っているのです。
SNSでの炎上や誹謗中傷などが目立ち、礼儀が欠けている現状を憂いているのが分かります。
そんな礼儀の欠いた状態で、自分が優勢になるような関係を持たないで、と注意を促しているのではないでしょうか?
まっさらな状態に戻ったら見えるもの

”じゃ一回出会い直してよ”つまり「何もなかったところからやり直しましょう」と提案されています。
なぜならまっさらな状態ならば、なんのバイアスもなくお互いを感じ合えることができるからです。
ドラマに即してみれば、「加害者の娘」と「被害者の息子」の立ち位置があるから二人の間に憎しみが生まれています。一旦立場を無くしてしまえば、もともとは何の罪もない真っ白な人間同士なのです。
お互いの立場を無くして考えてみたとき初めて、ふたりの欠点が美点になり得、あらゆる物事の原動になるのではないか?という意味へ紐解かれていきます。
この一節が終わったあと、伊澤一葉の美麗なピアノが入るのも特徴です!
出会い直しのきかない私たちがなすべきこと

1番のサビとは反対のことが歌われます。
つまり「好き」「嫌い」の価値基準も人によっては全く異なるからむしろ貴重なのでは?ということ。
この楽曲の軸は「全く異なる都合を抱える者同士、いかに差し障ってゆけるか」。
バイアスがかかってしまうのが当然だけれど、それでも手を取り合って仲良くやっていくのが人類でしょ?と折衷案を出しているのではないでしょうか。
思い込みや価値観が争いを生むこともあるけれど、それが他人との関係を深め得ることもある。
異なった都合をいかに認め合えるのか。人類に対してそう提示しているんだと考えられます。
必要火急なこととは?

人間関係に「脅威」はつきもの。
それをあなたはどう捉えるでしょうか?
私たちは生きている限り常にその脅威に晒されています。でも東京事変は”欲していたいよ万事を恋い慕いたい”と、脅威を含んだ人生を肯定して引き受けようとしています。
「都合や事情、背景が異なっている人間しかいないのだから、いっそのことそれごと愛しませんか?」と提案しているのです。
”必要火急”とは「不要不急」の反対語。
コロナ渦で叫ばれた「不要不急」とは裏腹に、人間同士が支え合っていくのは至急、必要なこと。
この楽曲はリスナーに対して「争いを止めて他者を受け入れようよ」と喚起しているわけです。

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おわりに
『赤の同盟』いかがでしたか?
東京事変の慈しみに満ちた平和を提案する楽曲『赤の同盟』、ぜひドラマと一緒に聴くのをおすすめします!
これからの東京事変の活躍にも注目です!